聖書の一冊目。
□聖書の五ページ目。
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貴女「んっ――…。此処、は…。」
森のざわめきで目が覚め、あたりを見渡すと一面真っ暗だ。だが、自分のいる場所だけ月から降り注いできている月光で明るくなっている。
貴女「ん…?あれ、服が…。」
胸元がスースーすると思い、胸元を見てみると少しはだけていた。…そんなに爆睡していたのか。そんな事を考えながら直し、欠伸を一つ漏らした。
…顔洗いたいな、何処かに湖はないだろうかと実体化させていた鴉から降りて鴉を消してから当たりを見渡した。
そのまま奥へと突き進んでいくと川の流れる音が聞こえ、川沿いを突き進んでいった。すると大きく広がる湖が月光を浴びて煌めいていた。
靴を脱いで湖に足を踏み入れると水面の上を歩き、真ん中まで移動した。やはり水面の上を歩くのは慣れないなと思いつつ夜空を見上げた。
夜空を眺めていると森が急にざわめき、木々が揺れ合っていた。まるで、警告の鐘が鳴るように。
「―此処に居たか。」
貴女「貴方はあの時の――。」
パンドラ「私はパンドラ。…やっぱり邪魔ね、貴方は…。」
急にさっきを出し、三叉槍を取り出して此方に向けるパンドラを見て絶句した。まさか僕を殺すつもりなのだろうか。
パンドラ「そう…そのまさかよっ!」
大きく跳躍して槍を振りかざしてくる彼女を見つつ首筋にある十字架に右手を添えて呟いた。
―――イノセンス、発動!
大きい袖で口元を覆い隠し、大きく息を吸った。
貴女「浮き出す想いと…繰り返す祈り―温め続けよ、心の声――………。
融けていく…この世界で…凍りついた――心に抱える想いをかち割らないで。
私の声は氷の中冷たい空へと落ちていくよ―両手に滲む冷たい水が、心変わりを感じさせてる…。
私の声は氷の中――思いと共に凍りついてる。どんなに熱い言葉さえも、吐き出す前に閉じ込めてしまう――…。」
水面が凍りつき、木々達も一瞬にして凍ってしまい、あたりは静寂と化してしまった。
貴女「…触れるな、愚人。」
呟いた瞬間、凍りついていた水面が針の山のようにパンドラを突き刺そうとするかのように向かっていった。
パンドラ「っ…!御前、何者…!」
貴女「忌み子…。」
パンドラ「忌み子っ…?」
貴女「アレイス・ウォーカー…。」
そう言って背を向けた瞬間、背中に激痛が走った。凍りついている水面には色鮮やかな真紅が広がっていた。後ろを振り返れば闇色に染まった黒い鎧をまとっている男性がニヤリと笑っていた。
純白の髪は自分の血によって鮮明な赤色に染まっていった。そのまま痛みを我慢して背を向けたまま大きく跳躍すると本を懐からだし、赤赤黒く、大きい鴉を実体化させてその場を去った。