聖書の一冊目。
□聖書の五ページ目。
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ハーデス城。
アローン「…中々思い通りの絵が書けぬ…。」
筆を手に持ちながら窓へと目を向けると月が煌めいており、何処か神秘的に感じる。そのまま月を眺めていると大きい鳥が月を横切るのが見えて目を細めて見てみた。
見覚えのある同じ修道服と純白の髪…だが、純白の髪の大半が深紅に染まっているのが解った。…紛れもなくアレイスだ。
窓を開けて身を乗り出して良く見詰めるとアレイスの乗っている鳥が砂となって消えていくのが見え、アレイスの身体が傾いて地面へと落下していく。
それを阻止しようと窓から飛び降り、アレイスへと近づいて落下していくアレイスの身体を受け止めてそのまま空中でアレイスの顔をまじまじと見た。
月光に照らされている顔には血の気がなく、余程血を流したのか僕と同じ修道服は湿っていた。取り敢えず横抱きにしたまま先程飛び降りた自分の部屋の窓へと入り、ベッドへアレイスを寝かせた。
枕やシーツがアレイスの血で汚れていくが気にもせずに病状を見ようとアレイスの身体を俯せにして切られているであろう背中を見る。
アローン「傷が…ない…。」
そう、傷がないのだ。切られたから血が出ていた筈なのにその切られた傷がどこにも見つからない。彼女は、一体…。