聖書の一冊目。
□聖書の十ページ目。
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ペルセポネ「私から…彼を奪わないでっ…!!」
貴女「っ――?」
ペルセポネ「彼を一番愛しているのは私なの…だから、だから…私から彼を奪わないでっ…お願い…!」
彼女の泣き顔と懇願に頭が混乱し、思考を停止させた。彼女はハーデスが好きで、じゃあ…僕は…?
彼をどう思っているの?ただ、ずっと一緒にいただけで…そして、後は?彼を知っているだけで、僕は彼をどう認識しているのか?
そう考えている間にも彼女は言葉を紡いでいく。
ペルセポネ「彼を癒せるのは私だけなのっ…!貴方には無理よっ…!」
ぽたり、と生暖かい水が僕の頬を滑り落ちていく感覚がした。頬に手を添えると微かに濡れており、指を濡らしている。
貴女「…大丈夫ですよ、僕は…僕は、貴方から彼を奪ったりしませんから。」
―勝手に口が動いて一番言いたくない言葉を紡いでしまった。あぁ、今わかった。
僕は、彼が好きだったんだ。彼女のことを妻と言った時に胸が苦しくなった原因もこれで良く解った。そう、今までの切ない胸の苦しみは彼が好きだったことに対する感情だったんだと。
でも、もう遅い。だから、この気持ちは伝えてはいけないのだ。伝えたら、彼女が壊れてしまうから。
僕は、そっと溢れ出す感情に思い蓋をかぶせ、二度とあふれ出さないように閉じ込めた。
ペルセポネ「(これで、彼は私の物…っ!)」
彼女が、こんなことを考えているのも知る由もない事。