ギラリン長編
□you 1
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前世のことを、思い出した。
「っぅ…ふ、……っ」
豪雨の中、涙を、嗚咽を止めることなんかしない。
僕はただの高校生だって、それ以外の他、知らない地で世界を守るなんてそんなこと、ないって思いたいよ。
ねえ、ねえ…神様、やだよ。
僕は…ギラヒムを傷つけなくちゃいけないの?
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起床してベッドの上で呆けていた。
午前中がテスト、午後から避難訓練というめんどくさいスケジュールに柄にも無く、自分にしかできない重大な役割があって、公欠にならないかな、なんて考えた。
作文コンクールとかなんかの大会とか…なんか無いかな。
《リンク…》
「…!な、なに…?」
《本来、貴方は…目覚めの時です。》
「めざ…め?」
《貴方はそこにいるべき存在ではない。》
「どういう、意味……なの、っ…ぅあ」
思考を戻されるほどの目眩。
記憶を失う突如、声が聞こえる。
「リンク…っ、リンク‼︎」
毎朝、遅刻気味の僕を起こしに来てくれる恋人の声。
「ギラ…ヒム…?」
「ダメだ!おい!行くな、っ…俺を置いてくんじゃねえ…」
なにそれ、まるでそれじゃ…僕、死んじゃうみたい…−もしかして、本当に死ぬのかな。
こんなに焦ってるギラヒム見るの初めて…可愛く思えてきた。
死んじゃう前に大好きだよ、って伝えたかったなぁ。
そんなことを考えながら、目を閉じた。
++++++++++++++++++++++++×
「かはぁっ…‼︎ っ、はぁ…はあ…」
溺れた時のような感覚で意識が少しずつ自分の中に入っていく。
「っ…ギラヒム、」
記憶が、途切れているけど。
はっきり覚えてる最期にみた恋人の顔。
え、てか待って。
「生きてる…!」
周りを見回すとそこには一本の輝かしい剣が鎮座していた。神聖なオーラを醸し出すその剣に、何故か僕はとても懐かしさを感じた。
「触ってもいいかな…?」
するり、人差し指で剣をなぞる。柄をさわる…そのとき青白い光を一定のリズムで放った。まるでその剣を取れ、と言わんばかりに。
「…、」
一息ついて、その剣を引き抜く。
微かな金属音と共に、凛と光る。
刹那、脳内に流れ込んでくるいままでの自分のしらなかった記憶。でも、確かに自分が冒険し救った世界の記憶。
そして、今のリンクに対して一番残酷な記憶。
カラン…、
先程手にした剣を落として、膝から崩れる。
「は…っ、ぁ……やだな、これ…本当に、僕、が、した、こと…だっけ?」
勇者は壊れ出す。
運命は共に曲がりだす。
《マイマスター、リンク。おかえりなさい。》