ギラリン長編

□you 5
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リンクside

「リンク。ごめん。もう君とは一緒にいれない。」

そう言われる日が来ることが何処かで分かっていた。それでも、怖くて目を背けて逃げていたのかもしれない。


また、嫌われちゃった。

ありがとう。ギラヒム。


楽しかったよ。

「ぅぐ、…っ、楽し、かったよぉ…っふぅぅ…ヒクッ、うええ…んっ、」



後ろを振り向かずに走り続けて、酷使した膝ががくり、と項垂れた。情けない泣き声は中庭に響いている。止めたい気持ちとは裏腹に堰を切った嗚咽はとどまることはない。




中庭の木陰で座っていると気づいたら曇り空。ポツリと雨が降り始め、だんだんその数が増えていく。

全て流してよ。僕の全て。

僕の知らない僕の過去で、何があったのかは分からない。いじめを受けてからこんなに臆病になったわけじゃない。ギラヒムといると、何かが痛い。でもその痛みをフワフワと甘さが包んでいる。これは何?
本当は一緒にいて欲しいよ。
でも、いれない。ギラヒム自身が僕を無理だと言ったから。覚悟してたはずなのに、こんなに愕然と絶望するのは何で?隣にいないだけで空虚感があるのはどうして?

雨の降る夜の街を途方もなく歩きつづける。豪雨で視界が滲んで、目が霞む。
この季節の雨に濡れ、寒くて震えてくる。顎がカチカチと音を立てた。
閉店した呉服店のガラスに映る自分のやさぐれた顔。


あれ?家、何処だっけ?


「そうか、スカイロフトに…帰ら…なきゃ」






え?



「スカイロフト…?」

何処かで聞き覚えがある。でも、聞いたことのない土地の事を今、無意識に口にした。



自分に驚きながらも雨の降る歩道を歩く。
横断歩道の反対歩道に止まっている人影に見覚えがある。でも、だれなのか出てこない。何故?
痛い、胸が痛い。苦しいよ。

「…っ!リンク?!」
「ギラヒ、ム…っ」


そこで、記憶が途切れる。


ギラヒム。よかった。
まだ覚えていて、忘れてなくて、よかった。


君の存在だけでも、忘れたくないよ。僕。

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