キャラと関わらずに済む方法は? 2

□29話
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「あ、」

「こんにちは」


廊下を目的もなく歩いていたらレオナルドに遭遇。
早朝であるこの時間、白蘭はアタシの部屋で熟睡している。
"アタシの部屋" で寝ている。重要なことだから二回言わせてもらった。

まあ今回も目が覚めたら白蘭が隣で寝ていたわけで。
幸せそうな顔で寝ている白蘭にイラッときて部屋を出た。白蘭が目を覚ます前に部屋に戻らないとな……ま、今はどうでもいいか。


レオナルドはヘタレっぽい顔で嬉しそうに笑っている。何が嬉しいのかなんて知らないが、ともかく嬉しそう。
心を読んでも "嬉しい" としか思っていなく、意味がなかった。
余程良いことがあったのか、アタシと会えて嬉しいのか……。


「おはよ……早いね」

「咲夜様もお早いですね。何か用事でも…?」

「ただの散歩。本当は外行きたいけど、白蘭が許してくれそうにないしね…」


アタシが苦笑いすると、レオナルドは同情するかのように苦笑した。同情されたことに少し不快感を覚えたが、それは口に出さない。
代わりと言ってはなんだが、軽くデコピンしてやった。


「イテッ、なんですか急に……」

「さあね、何となくだよ」

「??」


ハッと鼻で笑ってやり、そろそろ部屋に戻ろうかと踵を返した瞬間、行かせまいとするようにレオナルドに腕を掴まれた。
離させようと手を振るも、一ミリも離れる気配はない。
そりゃもやしっ子のアタシの力で振り払えるはずもないわな。もやしってか爪楊枝だよこれ。……あれ、前にも同じこと言ったような……。


「腕細いですね……ちゃんと食べてます?」

「あー……"ここ" に来てからはちゃんと食ってるよ」


シアンがいなくなってからの食生活は、かなり酷かった。
初日は米炊いて玉子焼き作って食ったりもしたが、めんどくさくなって三日どころか一日も経たずに自炊するのをやめた。
それからはスーパーやコンビニの弁当頼り。たまにお菓子やゼリー飲料で済ませてしまうこともあったりする。
そのせいで元々ひょろひょろした体が更に細くなってしまった。これもう完璧に点滴生活してる病人レベルだよヤベーよこれどうしよう。

そもそも食事する回数が少なくなってるからね……。
アタシにとっての食事は『暇な時にすること』になっている。
つまり腹減ってても暇でなければ食べないということだ。最悪の場合、二日に一回しか食べないこともあったりする。
そんな不健康な食生活すれば誰でも細くもなるわ。赤の他人に『大丈夫なの?』といきなり声をかけられる程に。


「咲夜様……いえ、咲夜」

「いきなり呼び捨てか。いや呼び捨ての方がいいけど」

「僕が誰だか分かりますか?」

「いやレオナルドだろ」


そう言うと鼻で笑われたよなにこれムカつく。
鼻で笑われることがこんなにムカつくことだとは思わなかった。
もう一回デコピンしてやろうと額に手を伸ばしたら、その手を掴まれた。


「まあ今はいいでしょう。……では」


掴まれた手の指先にキスされた瞬間、背中がゾワッとした。あまりの気持ち悪さに背筋が凍ったような錯覚に陥った。
なんだこれは、こんなに気持ち悪いと思ったのは久しぶりだ。
指先にキスて……テメェはどっかの国の王子か気色悪ぃ。


固まっているアタシの手を離すと、レオナルドは去っていった。
どことなく優雅な歩き方を見て、更に背筋が凍る。
たった5分でレオナルドに対する評価ががた落ちだ。アイツにはできることなら今後一生関わりたくない。見たくもない。


「……戻ろ」


今なら白蘭と添い寝できそうな気がする。
それくらいレオナルドという人間が気持ち悪かった。
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