キャラと関わらずに済む方法は? 2

□42話
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翌日、シモンファミリーのアジトがある島に上陸してしまった。
緑に囲まれた島にいても憂鬱な気分は変わらない。
アタシの頭の中は、早く帰ることでいっぱいになっていた。
当然だが、シモンとの戦いは避けられなかった。
しかもなぜか復讐者(ヴィンディチェ)まで現れて……。

『この戦いで力尽きた敗者は、我らの牢獄に永遠に幽閉する』

復讐者はたしかにそう言っていた。
誰が牢獄に入れられようがアタシには関係ない。
だが、もし、アタシも誰かと戦うことになってしまったら……。
アタシの勝率は、はっきり言って0だ。
姫宮リリアは戦ったことどころか修業すらしたことのない素人だったからなんとか勝てたものの、今回の相手は本物のマフィアだ。まったく戦えないわけではないとはいえ……アタシなんかが勝てるはずがない。
先のことを考えると気分が悪くなってくる。
なんでアタシがこんなところにいるのかわからなくなってきた。
いや、本当にどうして見知らぬ島なんかにいるんだろう。
アタシはマフィアじゃない。ただの一般市民のはずなのに。

「咲夜ちゃん、大丈夫? 具合悪そうだけど……」

隣を歩く沢田が話しかけてきた。
こんなおかしなことになってしまって大丈夫なはずがない。
むしろ、なぜ沢田は平気なのかと聞きたいくらいだ。
大丈夫なわけないだろ、という言葉を飲み込む。

「……大丈夫」
「そっか……。きつかったら言ってね」
「……わかった」

きついよ、きつい。
さっきからなんだか頭痛がするし、歩きっぱなしで足が痛い。
……なんて、言えるわけない。
仮に言ったとしても、それでなにか変わるとは思えない。
沢田たちは一刻も早く先へ進みたがっているのだから。
休憩したい、なんてわがまま言っておいてかれたら、シャレにならない。
――――黙々と歩き続けること、約五時間。

「何だ、ここ……?」

大量の木の葉が、木枯らしが吹いているかのように舞っているという、奇妙な場所に出た。
葉は意思を持っているかのように、こちらに向かって飛んでくる。
とっさに目をつむって腕で顔を庇うと、腕に鋭い痛みが走った。

「づっ……!」

腕から血が流れているが見えなくてもわかる。
鋭い木の葉はまるでナイフのようだ。
葉っぱごときに皮膚を切り裂く鋭さなんてあるはずないのに。

「この植物は全て、死んだ初代シモンの血痕から生えた芽を聖地に植え直し育てたものだ」
「! 誰かいる!!」

舞う木の葉の中から現れたのは、見覚えのある男だった。
最初から覚える気はなかったので名前は覚えていない。
こいつの名前なんだっけ、と面倒だが思いだそうとしていると「青葉紅葉!」と言う声が聞こえた。ああ、確かそんな名前だった。
あいつの周りにも木の葉が舞っているが、それが自身を傷つけることはない。
どうやら木の葉を操っているのは青葉紅葉のようだ。
青葉紅葉とは笹川がボクシングで戦うらしい。
一度でも膝をつけば負けのワンダウン制。反則技もあり。
当然といえば当然だが、やはりこの戦いも命懸けとのことだ。
地面から青葉紅葉と笹川を囲むように植物が一瞬で生える。
有刺鉄線ならぬ、有刺植物のロープとのことだ。
なぜわざわざ危険そうなリングを作るのかまったくわからない。
普通のじゃダメなのか、と問いたくなる。

「ゆくぞ……漢我流!!」

笹川の腕にあるバングルからカンガルーが現れる。
我流という名前らしい。

「我流!! 形態変化(カンビオ・フォルマ)!!」

笹川が叫ぶと、我流が消え、笹川の服が変わった。
どこの戦隊ヒーローだとツッコミたいのはアタシだけだろうか。
沢田と獄寺によると、あの装備は新しくなっているらしい。
青葉紅葉と笹川は何か話しているが、興味はなかった。
さっさと始めて、早く家に帰してほしい。
二人の話を聞き流していると、ようやく二人が動いた。
――戦いが始まったらしい。
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