家庭教師ヒットマンREBORN! 短編

□繋いで、離す。
1ページ/1ページ


兄妹にしては仲が良すぎる。
兄の友達(確か、獄寺さんだっけ)が言っていた。
わたしは普通だと思うけど、他人から見たらそう見えるのかな。
まあ、だからと言って、何をどうするというわけでもないが。



「にいさん、一緒に帰ろ!」


「おう、ちょっと待ってろ!」



兄は鞄に教科書を詰め込んで教室を出た。

いつもどおり、差し出された手を握りしめ、昇降口へ向かう。


わたしは兄の温かい手が好きだ。
兄といるときは必ず手を繋ぐけど、この手に飽きることはない。
なんなら、寝ている時だって繋いでたいくらいだ。
これも、兄妹なら普通だと思うけど、獄寺さんは違うと言う。



『テメーら、本当に兄妹か?』



なんて言われたことまである。
わたしとにいさんは正真正銘、血の繋がった兄妹だというのに。
顔だって、似てるって子供のころに何度も言われた。
なのにどうして獄寺さんはあんなこと言ったんだろう。不思議。


まあよくわからないけど、普通じゃなくてもいいや。

むしろ、仲が悪くなるくらいなら、普通じゃない方がいい。



「んで、獄寺がツナのシャーペン踏んじまって――――……」


「ははっ、大変だったね。……あ、そうだ。わたしは――――」



他愛のない話をしながら、のんびりと家へ向かって歩く。

話なんて毎日しているけど、これもやっぱり飽きない。


わたしって本当ににいさんのことが好きなんだな。
友達よりも、おとうさんよりも、好き。にいさんが一番好き。
にいさん以上に好き人なんていないってくらい、大好きだ。
わたしとにいさんが兄妹じゃなかったら、絶対ににいさんと結婚するのに。



「「ただいまー!」」



声を揃えて言い、家に入る。



「あー、今日もつっかれたー」


「疲れたねー。にいさん、晩ごはんの時間まで寝る?」


「いや、今日はツナと約束があるからツナん家行ってくるのな」


「うん、わかった。いってらっしゃーい!」


「ああ! 行ってくる!」



にいさんは鞄を床に置き、入ったばかりの家を出た。



――――わたしの手を、離して。



「あ……」



温かい手が離れ、わたしの手はすぐに冷えた。



繋いだ手は、必ず離れる。

生きているかぎり、離れてしまう。

死んだって、誰かが手を引き剥がしたら、離れてしまうけど。



なぜだろう。



(……ずっと、離したくないなぁ)



いつでも、いつまでも、にいさんと手を繋いでいたい。



……なぜだろう。
 
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ