恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)

□プロローグ
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 俺には最近、羨ましいと思うものがひとつある――





「丸井君!お誕生日おめでとー!!」

「ハッピーバースデー!!今日もカッコイイねー!」

「これカップケーキなの。一生懸命作ったんだ!食べて食べてー!」

「わたしもー!はい、プレゼントっ」

「ブン太く〜ん!」





 あー…うるせぇ。





「ん。さんきゅー」

「キャー!受け取ってもらえたー!」

「ね、食べて食べてー!感想聞かせてよ!」





 内心の本音を笑顔の下に隠してそう言えば、更に女子が騒がしくなんのはわかってっけど。

 これ以上っていうかこれ以外、どうしようもねぇしな。

 はぁ…ほんと、めんどう。





 4月20日。俺の誕生日。

 んでもって、学校に来んのが億劫になる日。

 理由はこの、朝っぱらからキャーキャー言ってくる女子だ。

 祝ってくれんのは嬉しいけど、限度っつぅもんがあんだろうが。





 …なんて、言えやしねぇけど。





 少し離れたところに仁王のやつがいた。

 一瞬ぶつかった視線が、ご愁傷様っつってやがる。

 そのアイツもアイツで、今もだけどいつも女子が周りにいるんだけどな。





 女子がうるさいのはいつものこと。別に今日に限らない。

 ただ、それに倍以上の拍車がかかってるっつーだけ。中学に入学した去年からそうだ。

 ほんと勘弁しろよ。





























「アハハハ!ほんっとお前マジおもしれぇー!」

『はぁ?』





 仁王がいるとことは別の場所、窓際の方からそんな声が聞こえてきた。

 いや、女子は今もうるせぇから聞き取り辛ぇんだけど――俺の意識はそっちに向く。

 囲んできてる女子の隙間から見えるのは、クラスメイトの荒井拓也と神谷瑞紀。





『荒井、最近いきなり笑いだすこと多くないか?』

「いや、それお前のせいだし」

『なんだそれ。てか、今なんかおもしろいこと言った覚えが全くないんだけど』

「自覚があったら怖ぇって!真顔でアレを異常現象とかねぇわ」

『あたしにはお前のツボがわからん』

「アハハハ!」








 ………いいよな、ああいうの。







 お前の隣に俺も行きたい
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