恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)
□5話 初夏U
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【丸井side】
関東大会が始まった。
流石に一日じゃ全試合は終わらねぇから、梅雨の時季の天気を考慮して2〜3日に分けられてる。毎年のことだ。
関東大会が終わる頃にゃ、本格的に夏になってるんだろうな。
んでもって、その次は全国だ。
「お、あれは神谷じゃなか」
「ん?」
仁王の言葉に振り返ったのは、俺だけじゃなかった。
大勢の観客とたくさんの歓声の中、アイツの姿はすぐに見つけることが出来た。
一人だけ空気が静かだから、かえって目立つ。
「神谷せんぱーい!!」
「赤也はほんとに神谷が好きじゃのぅ」
「というより、彼の場合は餌をくれる主人に懐いてる犬と同類ではないでしょうか」
「柳生の表現だと、なんだか神谷も気の毒だぞ」
「たるんどる!!」
「ふむ、今日もなにやらスケッチブックを持っているな」
赤也の声で、コート全体を眺めていた神谷がこっちに向く。
そういえば数日前、今日が関東大会初日だってことを話の流れで言ったら「ふーん、ならみんなの技、見に行くか」って言ってたな。
みんなの技、って言うところがアイツらしいぜ。
んでもって、柳の言う通り、大きめのスケッチブックが見えた。
俺達はまだ一、二年生だ。
だから、ここにいる全員がレギュラーじゃねぇ。幸村くんと真田あたりは堂々のレギュラーだけど。
むしろ既に、この関東大会から新部長と新副部長やってるしな。
んで、みんなも最近はちょくちょく試合に出るようになってる。もち、俺もな。
見てたら、神谷がなにかをマジックでサラサラ書いて、スケッチブックの面をひっくり返してきた。
「『健闘を祈る』か…ふふ、彼女らしいな」
幸村くんがそう言うのに、俺達は同意した。
俺もこの試合はコートに出る。
俄然、やる気が出た。