恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)

□9話 晩夏
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【丸井side】







 あれは、夏祭りが終わって直ぐのこと。

 柳んちのペンションで、テニス部で都合のつく数人と合宿みたいなモンをやってた。

 その時に、9月の修学旅行の話になって――








『ブン太は、場所をどこにするか、あるいは誰と班を組むか、もう決めてあるのか?』

『あー…その話か。そういう柳はどうなんだよぃ』

『俺はまだ思案の段階だ』








 他の学校とかは知らねぇけど、ウチの修学旅行は毎年、場所を選択出来る仕組みだ。

 んで、今年は京都か沖縄かイギリスの三つのうち、どこか自由に選べるらしい。

 だから、どこに行きたいかと、誰と班を組むかを夏休み中にある程度決めておけって

 そういう連絡が、クラス担任の先生から全員の家に行き渡ったのは、あの夏祭りの翌日のことだった。






 んな急なことになったのは、学校とか先生の方で色々慌ただしい調整があったみてぇで

 そんなわけで、とにかく、あと二週間もない夏休みは

 誰もかれもが、修学旅行のことで頭いっぱいってわけだ。








『まだ特に、なんも決まってねぇ』

『一緒の班になろうって、誘いたい子はいないのかい?』







 ・・・・・いる。

 幸村くんにそう言われるまでもなく、その連絡が回ってきた時

 脳裏に真っ先に思い浮かべたのは、“アイツ”で――







『ふむ、神谷と組んだら楽しそうだな』

『な……っ、お、俺は別に神谷とはまだ言ってねぇし!』

『む?なにを言っている、ブン太。俺はただ、私的な一考案を述べてみただけだが』

『ふふ…なるほどね、ブン太が誘いたいのは黄色いリボンのお姫様か。一緒の班になれば、今度こそ自分があげたリボンで髪、結ってあげられるしね』







 ・・・・・・なんでバレてんだ。あらゆる意味で。

 柳も幸村くんも、最初っから全部わかってて話を吹っかけてきたってわけかよ。

 いや…この二人に何か隠そうとするだけ無駄か。





 俺はこの時、自分の想いを自覚したばっかで

 まだ、心が落ち着いてなかったから

 上手く取り繕うことが出来ずに、ただ、そっぽを向くしかなかった。








『それで、どうなんだ。神谷を誘うのか?』

『…知るかよ』

『そうだなぁ。もし、ブン太が彼女からOK貰ってきたら、俺も一緒に組ませて貰おうか』

『その話、俺も乗ろう。仮に実現すれば、おそらく神谷には佐藤と藤田あたりがついてくるだろうな』

『というわけで、ブン太?よろしくね』







 完全にからかって遊んでやがる二人に

 俺はロクに何かを言い返すことはできなかった。






 ・・・・尤も

 反論なんてモンがそもそも、これっぽっちもなかった。
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