恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)

□12話 秋U
1ページ/9ページ



【丸井side】









 神谷が沈没した。








「朝のHR始めるぞー。そうそう、今日も神谷は風邪で欠席だから、だれかノートとかプリント、とってやれなー。じゃぁ日直は―――」








 …言わんこっちゃない。








 クラス担任の先生から聞かされるまでもなく、いつまで経っても教室に現れねぇからそうだと思ったぜ。

 原因はわかりきってる。

 いつかの球技大会ん時とおんなじだ。





 ひとつだけ空いた席をちらっと見て、俺はため息をついた。









「えーっ、神谷先輩、今日も休みなんすか?」

「おー、そうなんだわ」

「マズイっすよー、俺、英語の小テストあるのにー」

「お前な…」

「このたわけが!いい加減、そのすぐに神谷に頼る癖を直さんか!!」

「うげっ、ふ、副部長っ!?」








 昼休み。

 まぁ、この赤也はとりあえず放っておいて、真田にでも任せてだな。

 俺はさっき来たメールを確認する。










 “大丈夫”









 その、たった三文字だけの返信。









「丸井、神谷からなんて?」

「昨日と変わらずだぜ。そっちもだろぃ?」

「神谷のことだからなぁ、心配してメールしてみたヤツ全員に同じ感じだろうな」

「だな。つぅか、アイツの“大丈夫”ってあんま信用ならねぇっつーか」

「言えてる言えてる」








 荒井が横から覗いて来て、そんな風に苦笑しあう。





 大海原祭は土日の二日間だった。

 んで、そこから月曜日の一日を片づけタイム兼休日に充ててからの、今日は水曜日。






 あの宣戦布告みてぇなモンをした荒井とは、別に険悪ムードにはなってない。

 むしろ前より喋るようになったし、あっちから絡んでくることが多くなった。神谷絡みじゃなくて、フツーの男友達として。

 そういう風に付き合える性格のヤツで良かったぜ。









「次、確か体育だったよな。そろそろ着替えに行こうぜ、丸井」

「今日からマラソンだったっけか」

「そうそう。あー面倒くせぇ」









 ほんと、アイツ大丈夫かね。

 今日は放課後、試しに家に寄ってみるか…





 後でメールする文面を考えつつ、体育着を持って専用のロッカールームに向かった。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ