恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)
□12話 秋U
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【丸井side】
神谷が沈没した。
「朝のHR始めるぞー。そうそう、今日も神谷は風邪で欠席だから、だれかノートとかプリント、とってやれなー。じゃぁ日直は―――」
…言わんこっちゃない。
クラス担任の先生から聞かされるまでもなく、いつまで経っても教室に現れねぇからそうだと思ったぜ。
原因はわかりきってる。
いつかの球技大会ん時とおんなじだ。
ひとつだけ空いた席をちらっと見て、俺はため息をついた。
「えーっ、神谷先輩、今日も休みなんすか?」
「おー、そうなんだわ」
「マズイっすよー、俺、英語の小テストあるのにー」
「お前な…」
「このたわけが!いい加減、そのすぐに神谷に頼る癖を直さんか!!」
「うげっ、ふ、副部長っ!?」
昼休み。
まぁ、この赤也はとりあえず放っておいて、真田にでも任せてだな。
俺はさっき来たメールを確認する。
“大丈夫”
その、たった三文字だけの返信。
「丸井、神谷からなんて?」
「昨日と変わらずだぜ。そっちもだろぃ?」
「神谷のことだからなぁ、心配してメールしてみたヤツ全員に同じ感じだろうな」
「だな。つぅか、アイツの“大丈夫”ってあんま信用ならねぇっつーか」
「言えてる言えてる」
荒井が横から覗いて来て、そんな風に苦笑しあう。
大海原祭は土日の二日間だった。
んで、そこから月曜日の一日を片づけタイム兼休日に充ててからの、今日は水曜日。
あの宣戦布告みてぇなモンをした荒井とは、別に険悪ムードにはなってない。
むしろ前より喋るようになったし、あっちから絡んでくることが多くなった。神谷絡みじゃなくて、フツーの男友達として。
そういう風に付き合える性格のヤツで良かったぜ。
「次、確か体育だったよな。そろそろ着替えに行こうぜ、丸井」
「今日からマラソンだったっけか」
「そうそう。あー面倒くせぇ」
ほんと、アイツ大丈夫かね。
今日は放課後、試しに家に寄ってみるか…
後でメールする文面を考えつつ、体育着を持って専用のロッカールームに向かった。