恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)
□14話 晩秋
1ページ/8ページ
海が一望できる、とあるカフェのテラス――
〜♪ 〜♪
『あれ、電話だ』
「曲替えた?今度は何にしたんだい、クララよ」
『白鳥の湖第一幕の情景の滑り出し。残念ながらくるみ割り人形じゃな――…って、え、丸井?』
「はよ出てあげなさーい」
『その顔やめろ―――もしもし、まる ≪テメェが神谷瑞紀か、アーン?≫ ・・・・・・』
プ ッ ・・・・
「え、なになに、なに?どうしたの?なんだったわけ?」
『あ、いや思わず…何だったのかはこっちが聞きたいというか』
「ちょい貸しなさ ≪ 〜♪ 〜♪ ≫ もしもーし?丸井く ≪おぉ、なんやまた出てくれはったわ。ほな、さっきは堪忍な嬢ちゃん。わいらは≫ エロボイスに興味なんかないわ!!」
ブ…ッ!
「なに?なんなの今の関西弁エロボイスは!?ていうか赤髪少年はどこ行ったよ!?」
『なんだその妙なネーミングは…あ、またかかってきた――えーっと、もしもし?』
≪わーい、神谷ちゃんだC〜。オレオレ〜、オレのこと覚えてる?≫
『ん?その声はもしかしなくても芥川君?』
≪うん、ジローだよ〜!良かったぁ、覚えててくれて超うれC〜≫
『なんの新手のオレオレ詐欺かと思った。で、三度目の正直じゃないけど、さっきからのこれは何か説明して貰って良いか?』
≪うん、なんかホントごめ〜ん。あのね、丸井君に君の名前と写真見せて貰って、それで君がずっと憧れてたバレリーナだって思わず騒いだら跡部がね≫
『ちょっと待った。なんか話が複雑そうなんだけど、とりあえずそのケータイの持ち主はどこ行った?』
≪丸井君?えっとね、今は――≫
≪おいジロー、貸せ――おい、さっきはよくも俺様の許可なしに通話を切ってくれたな、アーン?≫
≪名前を名乗らんかったんはそっちやろ。怪しまれて当たり前や、自己チューなやっちゃな。嬢ちゃん、聞こえとるか?ウチの跡部がほんまスマンなぁ≫
『柳流に言うと、おたくらが氷帝のテニス部員である確率100%、で合ってるか?とりあえず丸井もしくは幸村を出せ。そしてこのカオスな状況を説明しろ』
≪ふふ…もしもし、神谷?さっきからごめんね、ちょっと面白そうだったから静観しちゃってた。で、もしかしてそこに佐藤さんもいるのかい?≫
「おい黒天使!瑞紀とのデートを妨害した罪がどれほど重いかわかってんのか、このヤロー!!皇帝だか帝王だか天帝だかなんだか知らないけど、そこにいる全員フルぼっこ決定!!」
≪あ、丸井君帰ってきたC〜≫
≪うん?って、おい、それ俺のじゃねぇか!なに勝手にイジってんだよ、ってか一体誰に電話かけてんだ!?≫
『あ、やっと持ち主が現れた』
≪あのね、丸井君のカノジョ≫
『は!?』
≪は!?まさか神谷かよぃ!?おい返せ!なに勝手にやってんだ!つか幸村君とかいろいろ止めろよ!?≫
≪邪魔すんな、今は俺様が話してんだ≫
≪いやだからアイツになんでかけてんだよ、意味わかんねぇだろ!?≫
≪神谷?なんか後ろがうるさいけど、とりあえず今から学校来られるかい?電話越しじゃ状況説明が難しいんだ。佐藤さんも一緒で良いからさ≫
『えー…っと、愛美。なんか拒否権とか選択権とか皆無っぽいけど、今からデートコースを学校に変更OK?』
「本当なら全力で無視してこの数分間をなかったことにしたいところだねー、ふっふっふ」
『けど、全員フルぼっこにするから行くと?』
「That’s right !」
『幸村、聞こえたか?』
≪うん、バッチリ≫
数分後――
『愛美、そこのコンソメ味とのり塩味を一袋ずつと、そっちのビスケットひとつ取って。あと――』
≪キットカットとルマンドも頼むぜ!≫
『ルマンド?って、あーはいはい、これね。あとなんだっけ、きのこの山だっけ向日君』
≪神谷せんぱーい!俺に焼き肉味のなんか買ってきてください!あ、あとフツーにチョコとかも!≫
『焼き肉味のなんかってなんだ』
≪そこにぬれ煎餅って売ってますか≫
≪ぬれ煎餅?日吉君か、またマイナーな…あゆみー、ぬれ煎餅探してくれるかー?≫
「は?ぬれ煎餅?なにその超渋い好み。ていうかリクエスト多すぎ、フルぼっこどころじゃないわー」
『あ。えぇっと芥川君、そこにいる?』
≪オレ?なになに〜?≫
『ムースポッキー好きとか言ってたな。今日発売の新作あるけどどうする?』
≪マジマジ!?やった!買って買って〜!≫
『はいはい。えーっと、まだなのが確か柿の種とじゃがりこと?あとココナッツサブレに、えーっと』
≪神谷、マジでわりぃ…つぅか、全部放り出しても良いんだぜ?≫
『あー…いや別にそんな罪悪感抱えなくても良いんだけど、とりあえず愛美の鉄拳制裁の方を心配した方が良いと思う』
≪俺からも謝ります、すみません神谷さん。本来は関係ないのに、しかも先輩にお菓子など買い出しだせてしまって…≫
『鳳君だっけ。そこまで畏まらなくても。どうせなら鳳君もなんかある?』
「ていうかさー、スポーツマンがこんなジャンクフード食べてて良いわけ?まぁどーでも良いけどねー」
≪さっきからコイツら、なんの呪文を言ってやがるんだ、アーン?≫
『呪文…』
≪跡部はお坊ちゃんやからなぁ、庶民の味ってもんを知らんからお菓子の名前もわからんのや≫
≪くそくそ、やっぱそういうトコがなんかムカつくぜ!≫
≪まぁ良い。なんだか知らねぇが、神谷とか言ったな。そこにあるもん、一通り全部買ってこい≫
『いろいろツッコみどころ満載なんだけど、なんだその、全てカードで支払うから問題ないみたいな金持ち発言と雰囲気』
≪ふふ…実際、跡部はお金持ちのお坊ちゃんだからね≫
「え、なに?現金は持ち歩かないでカードだけ財布に入ってるとかそういう?うわー、ないわー」
『さっき、後で金返すみたいなこと言ってたけど…あたしにカードは通用しないからな跡部君』
≪アーン?≫
≪神谷さんも佐藤さんも大丈夫ですか?すみません、こんなことなら居場所を伺って、こちらから迎えに行くべきでしたね。おそらくもう遅いでしょうが≫
≪いや、今からでも行った方が良いんじゃないか。二人ともどこにいるんだ?≫
『今日初めて聞いたな、柳生とジャッカルの声。いや別に気にしなくても、これくらい二人で持っていけるってば。皆はテニスしてて』
≪そっちも遠慮する必要ないぞ。ランニングも立派な鍛錬だ≫
「なになに糸目参謀、走ってくる気ぃ?ざーんねんでしたー、ここは立海から直線距離で30キロはありまーす」
≪問題ない≫
「うっわ、ほんとムカつくわー、その超余裕ぶった発言。だったら居場所も当ててみなさーい?」
≪それにGPSさえついていれば、俺様なら探し出すことなんざ朝飯前だ≫
「わー、なにその、個人情報なにそれ美味しいの的なノリ。犯罪者になる前に止めとくのが賢明ってもんよ世間知らずのお坊ちゃん?」
≪アーン?なんか言ったか雌狐≫
「いーえ、なぁんにも?」
『なんか微妙に喧嘩が勃発してるけど、そっちは合同練習っていう本来の目的は無事進行してるのか?してないよな?』