恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)

□16話 冬T
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【瑞紀side】










 神谷瑞紀の、ここ半月くらいの一日のスケジュールは、だいたいこんな感じ。









 普通に登校
 ↓
 授業受けて放課後突入
 ↓
 屋上庭園もしくは図書室在中
 ↓
 男子テニス部の例の7人と下校
 ↓
 幸村の見舞い
 ↓
 解散、丸井家直行










 三項目までは、まぁ二年生になってからの恒例。

 これまでと少し変わったのは、その後だ。







 別に、表立ってなにか約束事とかしたわけじゃない。

 けど、幸村の見舞いに行くのは同じで、屋上庭園か司書当番で残ってれば下校のタイミングがバッチリ重なる。

 元々、あたしが主に使ってるのがテニスコート脇にある東門ってこともあって

 例の7人とは自然と一緒になるか、もしくは誰かが呼びとめてくる。







 全てはなりゆき。

 あたしは、あくまでテニス部にとっては部外者。

 特別な使命感や義務感はない。

 ただ、彼らが迷い込んだイバラ道に

 一緒に立ってる。

 それだけ。
















 で。

 只今、金井総合病院近くの公園にいるわけなんだけど。



















「うっわ、なんか辛気臭い集団がいるかと思えば」

『あれ、愛美』

「佐藤の降車駅は、もっと別の場所だったと記憶しているが」

「げ、そこもデータに入ってるわけ」






 皆でベンチにいたら、まだ制服姿の愛美が通りかかった。

 偶々、今日はこの近くに用事があって帰る途中だとかなんとか。







 ぐるりと見回して

 腰に手をあてて、愛美はひと言。







「なに、黒天使君に今日も拒絶されて心折れそうで家に直帰する気になれなくてこんなトコでたむろってんの」

「なにも説明していないのに、よくわかったな」

「アタシを誰だと思ってんのよ。主に重症そうなのは、そこの一年坊主ってとこかねぇ」








 そう、愛美の言うとおりだった。







 全員、わかってる。

 今の幸村は、ああなるしか出来なくて、こっちはただそれを受け止めて時を待つだけだって。

 わかってる―――けど、それでも落ち込んじゃうのがヒトの心だ。

 そう、同じ経験をした“先輩”のあたしでさえ。








「甘いわね」









 一刀両断。

 まさしく、そんな風に愛美は言った。









「もうヘバってんの。甘い甘い、甘すぎるわー。ここで根を上げるんなら黒天使君の仲間なんてさっさと止めちゃいな」

「……アンタに…アンタになにがわかるってんだよ!!」

「少なくとも一年坊主のあんたよりかはわかっとるわボケ!!!」







 愛美の挑発に若干キレた切原だけど、

 その数倍、勢いと迫力があったのは愛美のほう。







「友達とか仲間とかナメてんじゃないわよ!そういうのはね傷つくもんなの!そりゃもうボロクソに傷つくの!!
 アタシなんて瑞紀に拒絶されて八つ当たりされてどんだけ泣いたとか覚えてないわよ!!この瑞紀にだよ!?わかる!?
 あんたら全っ然まだまだよ!いっそもっとボロボロになれや、この甘チャンが!!!傷つくのが嫌だってんなら仲間なんて止めた方が身のためじゃ!!!!!」







 パカ、って口を開けっぱなしの切原。

 他6人も、それぞれの表情でビックリ仰天。






 そう、これが

 愛美があたしの親友たる所以。








「んでもって、あの黒天使が精神的に復活したら言ってやれ!あんたのせいでどんだけ辛くてどんだけ傷ついたんだって思いっきり言ってやって『バーカ』って笑い飛ばしてやれや!
 それくらいの気合い持ってなけりゃ友達とか仲間なんてやってられんわ、この阿呆ども!!」







 そうやって、言うだけ言った愛美が

 さっさと立ち去ってって数十秒後。












「……すげぇな」

「凄いですね…」

『あれがあたしの親友だけど何か?』











 丸井と柳生の呟きに、ひと言、そう応えて

 茫然としてた若干名は気付いてなかったけど

 もう暗いから、って一人、愛美を追いかけて行った柳に内心で感謝した。





 






 …少し、その柳になにか引っかかった気がしたけど

 あまり気に留めなかった。
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