恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)
□18話 冬V
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小学生の頃
いのちのじゅぎょう、なんてネーミングの授業があった。
先生は言った。
おうちのひとに、自分の名前の由来や産まれた日のこと、君達が産まれた時の気持ちを聞いて来てね…って。
その日、家に帰って一番にしたことは
自分の生年月日を調べること。
全部の持ち物をひっくり返して、探し当てたのは保険証。
そこにワープロで刻まれた数字を眺めて、初めて“誕生日”っていうものを知った。
ふーん―――これが、率直な感想だった。
月を示す一桁の数字と、日付を示す二桁の数字。
ワープロの字は無個性すぎて、次の日の朝には忘れたから、登校前にもう一度確認する羽目になった。
調べたことを発表する日。
自分の発表時間は、1分もかからなかった。
先生や同級生の反応は妙だった。
自分の方がフツーじゃないんだって、なんとなく、すぐに気付いた。
いのちのじゅぎょう、の最後に先生はこう言った。
君達を産んで育ててくれたお母さんやお父さんに感謝して、ちゃんとした大人になりましょうね…って。
“あたしはちゃんと人間なの?”
そんな疑惑が心に浮かんだのは、たぶんだけど、その頃からだったと思う。
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