恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)

□番外 抱きしめたい
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【丸井side】

これは修学旅行が終わってからすぐのこと。

文化祭の出し物とかを決めるHRで、予想以上にすんなりと決まった俺達のクラス。
偶然にもクラス担任がこの日は欠席で、ここぞとばかりに余った時間を遊ぶことにした。

誰が言いだしっぺかはよくわからない。
まぁ最終的に全員ノった時点で全員同罪だろぃ。

んで、やったのは定番の王様ゲーム。




「王様だーれだ!」




人数分の割り箸。
王様用に先っぽを赤く塗ったやつ以外は番号が書いてある。

この時王様になったやつが指名した番号は、20番と14番だった。




「王様ー、なにやらせんのー?」

「んじゃ、14番のヤツが20番のヤツの耳にフーってやれ!」

「うっわ、お前エッロ」

「今時これくらい別になんてことねーって、別にチューするわけじゃねぇんだしよ。で、番号ダレだ?」




…おい、マジかよ。
20番とか俺だし。

正直言いたくなんかなかったけど(内容が内容だし)、名乗り出ねぇと終わんないから渋々20番を名乗った。
途端にほぼ全員がドヨめいて、煩くて思わず顔をしかめた。特に女子うるせぇ。

つーか、14番誰だし。




「丸井ご愁傷さま〜」

「んで、14番ダレ?」

『あたし』




俺とは違ってアッサリと名乗り出たその声に、俺はビシっと固まった。
全員の視線がアイツ――神谷に集中する。

………いや、おい、ちょっと待て。
嘘だろ…。

なんでよりにもよって…いや、他のヤツとか特に野郎とかでも困るけどよ!
つーか!俺は内心けっこうテンパってんのになんでアイツあんなに涼しい顔してんだよ!?




『えーっと、なんだっけ。耳に息?吹きかけるって言った?よくわからないけど、どれくらいの強さで息吹けば良いんだ?あと、フって短く?フーって長く?』




あ、この子なんもわかってねぇ…



俺も含め神谷以外全員の内心の声が聴こえたのは絶対ぇ気のせいじゃない。

しかもなんか、どんな風にやれば良いのか首を傾げながら、自分の手の甲に息吹きかけて試行錯誤してるし。
…それを見て、ヤベェ可愛い、とか思った俺も相当ヤバイけど。




「…瑞紀ちゃん、ずっとそのままでいてね」

『はい?というか、もうやっていいわけ?』




机や椅子を隅に寄せて輪になってるのを抜け出した神谷。
ひょいと隣にしゃがんで来られて俺は無意識に少し仰け反った。

ヤバイヤバイ、なんかヤバイ。




『丸井?顔少し赤いみたいだけど平気?』

「な、なんでもねぇよ」

『そうか?ていうか今気付いたけど、このままだとやりにくいから肩に手、かけて良い?』

「お、おぅ…」




全力で逃げ出したいのを必死で抑え込む。
ここに幸村君や仁王とかがいなくて良かったってマジで思った。

この温度差どうすればいいんだよ、つーかなんの羞恥プレイだ…っ!
惚れてるヤツから無自覚にされるとかどんな拷問だよ!?




『じゃぁ、やるけど』




肩に触れてる温もりとごく軽い重み、そしてゆっくり近づいてくるコイツの顔に、心臓が破裂するほどバクバクいってて。
正直、俺達に集中するありとあらゆる視線なんか気にしてる場合でもなくて。









ゾク…ッ









「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っっっ!!?」

『うわっ!?』




咄嗟に耳を抑えてバっと離れた。
そんな俺に神谷はビックリしてキョトンとしてるけど、んなの気にかけてる余裕なんか残っていなかった。




「ちょっと便所!!」




叫ぶようにそう言い捨てて、俺はダッシュでその場から退散した。
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