恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)
□1話 春T
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午後は校内美化清掃ってのがあった。新学期が始まると必ずやるイベントみたいなもん。
俺も含めて、だいたいのヤツは面倒くさいと思ってる行事。
「ブン太くん、今年もテニス頑張ってね!応援してるから!」
「今日も練習あるよね!絶対見に行っちゃう!」
「ねぇ、今度一緒にどっか遊びに行かなぁい?」
来なくて良いし行かねぇし。
つぅかお前ら、自分の仕事しろよ。
ほんと、なんでこんなにうるせぇんだ。
俺らのクラスは中庭の雑草取り。
ビニール袋と軍手を貰ってやり始めたところで、クラスの女子が先生の目を盗んであれこれ話しかけてきやがる。
俺だって美化清掃は面倒だし正直やりたくねぇが、それ以上にこいつら相手にする方が面倒くせぇ。
「あー、さんきゅな。けどそれよか、今はこれやんねぇとじゃね?」
「えー、そうだけどぉ」
「アタシ、軍手貰ってないんだよねぇ。なんか足りないんだってぇ」
「わたしもー。やだ、手ぇ汚れちゃうー」
「今日せっかくネイルしてきたしぃ」
事前に知らされてたんだからネイルなんかすんなっての。
ひたすら手や爪のことを気にして、俺も人のこと言えねぇけど、俺とのお喋りで時間を潰そうとしている女子にイラっとする。
その時、すっと一つの影が近くに来た。
『これ、使う?』
「え?」
『あたしは軍手なくっても良いから』
ポイっと白い軍手を女子の一人に渡して、そのままスタスタと歩いて行ったのは神谷だった。
既にどっかの雑草を取り終わったみたいで、ビニール袋の中には緑や茶色の塊が見える。
手は、俺らと違って土で汚れてた。