恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)

□3話 春V
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【瑞紀side】








 あー…さっきは恥ずかしいことしちゃった。





 あれだな、ああいうのは丸井みたいに愛嬌とか茶目っ気のある人間がするからこそだよな。

 身をもって学んだ。

 気づいたらマネしてたけど、もう一生やらん。







 それにしても、あの妙技をこんなとこで応用できるのか…天才的なんじゃなくて天才だろ、あれ。

 どういう原理になってるのか知りたくて、丸井のことずっと凝視してたら愛美と小百合に笑われた。変な顔だったみたい。

 いやでも、どのタイミングであの妙技が出てくるかわかんないから、そうするしかなかったし。

 でも結局なんもわからなかったけどな。まぁ当たり前か。わかってたけど。








 とりあえず、それはさておくとして。

 今は試合の途中だからこっち集中しないと。







「瑞紀、大丈夫?疲れてない?」

『んー?別に平気だけど』

「でもさぁ、みずっちほとんど休みなしで今日やってんじゃん。いくらなんでも借り出されすぎでしょ〜」

『まぁ今日に限って休みの人とかがいるからな。しょうがない』







 球技大会の種目はいろいろ。

 バスケにバレーにサッカー、野球あたりは定番で、それにテニスやドッジボール、卓球とかほんとに沢山ある。

 とはいえまぁ、立海の生徒数考えればどうってことはないというか。








 運動部の人は同じ種目はダメ、一人必ず一種目は出場ってルールで、あとはクラス内での人数調整とかでどうなるか決まる。

 で、今回は病欠とか怪我で出られないっていう人が何人かいて、その埋め合わせのためにあたしはさっきから色々な会場を回ってて今はバスケなんだけど。

 たぶん、中には仮病の人もいると思う。

 それにしても、暑いな。








 ボールをパスされて、そのままドリブルでゴール下を目指す。

 もちろん、相手チームがそれを止めようとするから、両手を使ったり身体を回転させたりして、チームメイトの動きも把握しながらなんとか進む。

 運動神経は悪くないほうだけど、かといってずば抜けているわけでもない。

 特別なにか得意なわけでも不得意なわけでもない。

 だから、種目選ぶのはいつも困るけど、結局はいろいろ出てるっていう。あはは。








 目の前に迫った相手を避けてドリブルのまま、くるりと身体を回転させた。

 その時、一瞬、外野で見てる丸井と目が合った――気がした。

 けど、こっちは確かめる余裕もないから意識はすぐに試合に戻る。

 そのまま勢いをつけてシュートした。

 よかった、決まっ――











「神谷ナイス!!」











 ――びっくりしたぁ…。








 なんかその声がやけに体育館の中で響いたような気がする。

 思わず振り向いたら、丸井がニカって笑って親指を立ててきた。

 それに、あたしも無言で同じ仕草を返す。








 あ…なんか、嬉しいかも。ていうか、微妙にくすぐったいのはなんでだ?

 今、たぶん、顔笑ってる。

 なんとなく気づかれたくなくて抑え込もうとしてるから、すごく変な感じになってると思うけど。








 丸井の方を向いてたのはほんの数秒で、すぐに再開した試合に没頭する。

 点を取ったり取られたり。別コートでは別のチーム同士が試合してるのが見える。

 いろんな声が体育館に響いてて、もうどれがどれだか。

 そんな中で、丸井どんだけ声張り上げたんだろ。なんかまだ元気有り余ってる感じがする。さすが男子。








 あー…なんか、ほんと暑い。

 喉も乾いてるし、平気とか言ったけど流石に足は重くなってきてるし。

 楽しいから良いけど








 ――…とか思って油断してたのが、マズかったかなぁ。
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