恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)
□4話 初夏T
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【丸井side】
ビビった。マジでビビった。
今までで一番ビビったと思う。
今日は日曜日で珍しく部活は休み。
地区大会が終わって県大会がつい昨日にあった。もちろん、俺達の圧勝だぜぃ。
・・・・っていうのは置いておいてだな。今はこっちだ。
俺には弟が二人いる。歳が離れててまだ幼い。
そして、そんな弟達の世話をするのが俺の日課だ。
でも、今日は母親が近所のママさん友達とやらと一緒に弟二人を連れ出していて、テニスと弟の世話漬けの毎日な俺は久々に、一人で家でゆっくり過ごしてた。
もちろん、テニスや弟たちが嫌なわけじゃないぜ?
で、ついさっきまで台所でケーキ作ってたんだけどよ。
インターホンが鳴って、玄関を出て相手を見た途端、固まった。
びっくり仰天っつぅより、俺の頭に星がひとつ当たって落ちたと思う。
いや冗談抜きで。
だってそうなるだろ?
ウチの場所知らねぇはずの神谷が玄関にいるだけでビビるってのに、アイツはなぜか全身びしょ濡れ。挙句、やっぱりびしょ濡れでグズってる弟一人抱えて立ってたんだぜ?
言っておくけど、今日の天気は快晴だ。
これでビビるなって方がムリだろぃ。
『ちょ、待て!床が濡れる!引っ張るな!離して!』
「んなもん拭きゃどうにでもなる!とにかくシャワー浴びろシャワー!」
『いや良いから!良いから帰らせろ!それよりこの子どうにかしろし!』
「こっちは俺がどうにかすっからお前はこっち来い!」
『だから人の話を聞け!!』
これまたなぜか裸足だった神谷を、無理やり引っ張って風呂場に連れてく。
詳しいことは知らねぇし、なんで弟一人がコイツといるのかもわかんねぇ。
けど、んなもん後回しだ。
シャワーの栓を全開にして、逃げるのを諦めさせるために思いっきり浴びせる。
『うわっ』
「諦めろぃ。タオルとか用意しとくから身体綺麗にしろよ、良いな」
『ちょ、だからそんなことしなくて良いから帰らせてってば』
「服とか俺の母親のになるけど勘弁な。じゃ」
『丸井!』
抗議してくる神谷を無視して、グズグズ言ってる弟を玄関脇の水道に連れて行く。
今日が比較的暑い日で良かったな、こっちはとりあえず水でなんとかなる。
こうやっていつも泥だらけになる弟を洗ったりすんのは、いつものことだ。
にしても、泥のカスとか茶色くなった葉っぱとかついてんな。どっかの川だか池だかに落ちたのか?
神谷は諦めたみたいだな。
出てくる気配はねぇ。
とりあえず、早いとこタオルとか持ってってやんねぇと。