恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)

□6話 夏T
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【瑞紀side】












 なんで子供ってこんなに元気いっぱいなの!!?











「ごめんなさいね、瑞紀ちゃん。せっかくの服がドロだらけになっちゃって」

『汚れてなんぼなんで気にしないで下さいっ!』

「そう言ってくれると助かるわ」















 丸井家の母・紗奈恵さんにそう答えたけど、こっちは走りまくっているから半ば叫んでるって感じで。

 さっきから、遼太君と翔太君と一緒になって公園を縦横無尽に駆け回ってる。

 翔太君は紗奈恵さんのところで大人しくしていることも多いけど、こっちの遼太君がもうね。

 この爆発的な体力は一体どこから来てるんだろうって本気で思う。
















 つい数日前に、土曜日は暇かって丸井に聞かれて。休日は基本、暇人なあたしは頷いて今に至る。

 今は午後だ。

 約束の昼過ぎに丸井家に顔を出したら、「おねーちゃん!!」って遼太君に飛びつかれて、危うく尻餅つくところだった。

 長男たる丸井は、午前中からずっと部活らしい。

 さすが強豪校のテニス部。
















「ここまでおいでー!!」

『待てー!ていうかほんとに足早いよ遼太君!!』















 にしても、こうやって思いっきり遊ぶのっていつぶりだろ。

 かなり久しぶりな気がする。

 子供相手は慣れないから、あたしなんかで平気かとか色々思ったけど杞憂だった。






 駆けっこして

 遊具を登って降りてくぐって

 鉄棒して

 ブランコ乗って

 水道で水を飛ばして水かけっこして

 ボールを蹴って縄跳びして…










 楽しい

 疲れたけど、でも素直にそう思う。












 なんだろうな。

 丸井は遊んで「やって」くれって言ってたけど。

 どっちかっていうと、こっちが遼太君や翔太君に受け入れて貰ってるっていうか。

 遊んでやる、遊んでもらうっていうのじゃなくて「一緒に遊んでる」って感じで。












「あ、にーちゃんだぁ!!」










 ふいに遼太君が大きな声を上げた。

 どうやったのか、急ブレーキをかけて方向転換するなりピューっと駆けていく。

 本当にお兄ちゃんっ子だな。













 部活、終わったのか。

 バッグを肩にかけたまま、ひょぃって手慣れたように丸井は遼太君を受け止めて抱き上げた。













「おぅ、遼太。やっぱここにいたか」

「うん!にーちゃんもあそぼ!!」

「へぃへぃ」















 遼太君の後に続いて、あたしも自然と歩いてついてきた。

 目が合う。

 数秒後、目の前で大爆笑された。















「アハハハハ!!すっげぇ恰好!どんだけだよ!!」

『なんか最近、丸井に爆笑されること多いな』














 まぁたしかに、弁解のしようもなくあたしはドロだらけのホコリだらけなんだけど。

 髪も乱れてるし、およそ人様の前に堂々出られる恰好じゃないのは自覚してる。

 途中から靴も面倒になって脱ぎ捨てて、今は裸足だしな。

 部活で汗だくの丸井よりひどい。たぶん。















「こらブン太。女の子に言うセリフじゃないでしょう」

「いやこれ賛辞だって賛辞」

「んもぅ、デリカシーのない子で悪いわね瑞紀ちゃん」

『いえ、むしろあたしが彼に同感です』
















 自分でも鏡を見たら笑う自信がある。

 あっけらかんとしてて表裏のない丸井の言葉は、嫌じゃないし苦手じゃない。















『部活お疲れ。調子は良いの』

「ったりまえだろぃ。俺の妙技は健在だぜ」

『そうか。で、この間言ってた新技はどう?』

「おー、あれな。あともう少しで完成しそうだわ。出来たら見せてやるぜぃ」

『そりゃ楽しみ。名前は?』

「名付けて『鉄柱当て』」

『まんまだな。もう少しなんかないの』

「いーんだよ、わかりやすいだろぃ」
















 最近よく思うのは、丸井とは話していて楽しいなってこと。

 毎日、結構楽しみにしてるんだよね。丸井と話すの。

 特に話題とか考えてるわけじゃないけど、なんか気づけばよく一緒に喋ってる。









 別に他のクラスメイトとかが楽しくないって意味じゃなくて。

 ただ、単純にそう思うってだけ。

 内容はなんの変哲もないことだけど、普通に楽しい。


















「にーちゃん、おねーちゃん!おにごっこしよ!!」

「おっしゃ、んじゃ俺が鬼やってやるから逃げろよっ?」

『うわ、丸井が鬼とかあたしが最初の餌食になること確定じゃん!』
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