恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)

□11話 秋T
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【瑞紀side】








 おー、燃えてる燃えてる。やっぱ木で燃やした火は違う気がする。

 ていうか、キャンプファイアーって言うけど、これキャンプじゃないし。アレって正式にはなんて言うんだろ。うーん、わからん。

 そういうどうでも良いことを、今、屋上庭園から下を眺めつつ考えているわけだけど

 ・・・・・なんとなく、ため息が出る。






 明りと言えば、あの火と、夜空の月と星と、近場の町明り。

 この穴場な屋上庭園は、まぁ想像するまでもなく暗いわけで。

 楽しかったけど疲れたし、落ち着くからここにいるんだけどさ。






 ・・・・なんか、別にあたしには関係ないことなのに、さっき聞いた会話が耳から離れない。











“あの、ね。その…丸井君のこと、一年生の時からずっと好きだったの。わたしのこと、よく知らなくて何?って思うかもしれないけど…どうか、お付き合いさせてもらえませんか?”










 片づけを頼まれた器材を置くために、指定の教室の中にいた時に、隣の教室からそんな声が聞こえてきた。

 うわ、なんてタイミングの悪い…っていうのが咄嗟の感想。

 人通りの少ない場所で、下手に物音立てるわけにもいかないし、何よりそんな本人達にとってトップシークレットな大事なシーンを、不可抗力とはいえ盗み聞きするのも気が引ける。






 運悪くもかさばる器材で、まさか放り投げるわけにもいかない。

 だから、慎重に慎重に、物凄く気を遣ってあたしは器材をそぉっと片づけた。






 その間にも、やっぱり聞こえてきてしまう声と声。






“あー…なんつぅか、ありがとな。気持ちは嬉しいぜ。でも――わりぃ。俺さ、他に好きなヤツいてよ。だから、付き合うことはできねぇんだわ。ごめんな”

“そ、うなんだ。好きな人、いたんだね…”







 よし、器材置けた。早くここから離れないとな。

 心の中で意識してそう呟きながら、教室のドアをそぉっと閉めて、これまたかなり慎重に足を忍ばせてそこから離れた。

 ドアから出る寸前、ほんの少し、他の器材に手が触れてちょっと音が立った気もするけど…許容の範囲、だよな?ていうかそうであってくれ。







 丸井、それと知らないどこかの女の子。聞いちゃっててゴメン。

 やっぱり意識して心の中でそう謝って、完全に遠い場所に離れてから、無意識に詰めていた息を一気に吐き出した。

 あー、よかった。これで一応、気付かれてないよな?







 そう安心して、ホっとするはずだった。

 いや、ホっとはした。

 けど、それはほんの一瞬のことで

 ・・・・・・・・・・なんだか、胸の内側が嫌な感じに疼いた。





























 ―俺さ、他に好きなヤツいてよ


























『………良いな、丸井に好きになって貰えた子』







 下の校庭で燃え盛る火を、フェンスに寄りかかってボーっと見つめながら、無意識にそう呟いた。








 耳に何度も甦る、丸井の声と言葉。

 今もまだ続いてる、ジクジクとした胸の疼き。

 






 校庭では次第に音楽が流れ始めて、いわゆる定番のフォークダンスとかが始まろうとしていた。

 自由参加だし、帰ってる子もいるし、別に参加はしなくても良い。

 去年はどうしてたか…ああ、そうだ。愛美と小百合と一緒になって、なんか知らないけどテキトーに踊って楽しんでたな。

 ここからじゃよく見えないけど…丸井も、あの中にいるのかな。







 結局、今日は一度もまともに話したりできずに終わったな。

 この学校って敷地広いし、大海原祭の時は高等部とか大等部の校舎も関係なく入り乱れて模擬店とか出るから、会いたいって思う相手ほど会えなかったりする。

 つまりは、そのお決まりってわけか。






 ・・・・・・ていうか







『あたしって、なんか物凄く邪魔じゃないか?これ』








 夏休みが終わってから、普段の学校でも丸井と一緒にいることが前より多くなった気がするし、なんか休みの日なんて毎週丸井家にお邪魔してるし。

 丸井に好きな子がいるとか、全然気付かなかったというか、そこらへん気にしてなかった。

 女の子に人気なのは周知の事実だから、そこは認識あったけど。こう、リアルにさっきみたいなシーン聞いたら、な。

 うわ、なんか考えれば考えるほど自分が邪魔に思えてきた。








 ん?こういう場合って、あたしは遠慮した方がいいのか?

 いや、ことさら意識しまくるのも変だし、別に変に態度変えることもないだろうけど。

 あれ、じゃぁどうすればいいんだ?

 んー…ヤバイ、こういうのってよくわからん。

 いっそ本人に聞くか?どうした方がいいかって。

 いや無理だな。それこそ変だし。







 ―――よし、結論。

 あたしは今まで通りで良い。フツーに友達なんだし。

 でも、もし丸井がその好きな子と上手くいって、付き合うとかそういうことになったら、その時に改めてどうするか考えれば良い。

 そうだな、その方がわかりやすい。その方が、相手の女の子があたしにどうして欲しいかも聞いてわかるだろうし。

 要するに二人の気持ちを優先させれば良いんだから、今はこのままってことで。






 ・・・・・・でも、もし、そうなったら

 ・・・・・その時はやっぱ、あたしは今みたいに丸井の隣にはいられない、のか…








 ・・・・・・・・・・・・・






 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・








 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・













『………やだな…』
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