恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)

□16話 冬T
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「瑞紀ちゃんの淹れるお茶は美味しいわぁ。さっきのお紅茶だって、ブン太のケーキとよく合ってたし。なにかコツでもあるの?」

『特別なことは何も。ただ、従姉が飲み物にうるさい人で、なんでも凄く丁寧に淹れるんです。だから、あたしも自然とやり方を覚えたというか』

「従姉さんがいたんだね」

『はい。兄と並んで唯一、神谷家の中では気にかけてくれてる人です』









 紗奈恵さんと秀信さんに煎茶を淹れつつ、チラっと時計を見ると

 ちょうど20時を過ぎるところだった。







 学期末テストを乗り切って、終業式を迎えたのが三日前。

 師走というだけあって、あっという間に時間は過ぎて

 今日、クリスマス・イヴを迎えた。







 風呂場から、丸井家三兄弟の賑やかな声が聞こえてくる。







『飲み物ひとつで料理やお菓子の味わいも、食べる人の気持ちも全然違うものになるから、疎かにするなって口酸っぱく言ってて。
 特に香りを大事にしてました。茶道にも精通してて、数年前に神社に嫁いで行きました』

「あら、神社に?近頃にしては珍しいわね、是非会ってみたいわ」

『ありがとうございます。ただ…』

「どうしたの?」

『ここ数年、音沙汰なくて心配で。兄も、実家の目を盗んでよく遊びに連れだしてくれてたんですけど、最近は全く会えてないんです。多分、実家の事情だと思うんですけど』






 少し暗い話はここで終わり。

 兄と従姉がどういう人達なのか、ひたすら楽しくて面白い話を二人に聞いて貰った。














 クリスマス・イヴ。














 丸井家5人と買い物行って

 三兄弟と遊んで騒いで

 クリスマス・ツリー飾って

 料理作ってひたすら食べて飲んで

 TVとか見ながら大笑いして

 シャンパンの栓が飛んで天井にぶつかった時はなんかツボってツッコまれて

 丸井パパ&ママが三兄弟のアルバム見せてくれてまた笑って














 毎年一人だったから、こんな風に過ごすのは初めてで。

 なんだかちょっと、くすぐったいような気がする。












 あ、三兄弟が戻ってきた。












「おい遼太、まだ髪の毛ちゃんと拭けてないぞ」

「おねーちゃーーん!ジュースのむー!」

「あら遼太、さっき歯磨きしたばっかりじゃない。虫歯になっても知らないわよぉ?」






 なんだかんだと許可をもぎ取った遼太君。

 台所に一番近い席だったから、あたしが用意してコップを手渡した。

 翔太君は、もうなんか半分は夢の中っぽい。






「神谷、もういーから風呂、行ってこいよ」

『あ、うん』

「ゆっくりしてきなさい。今日は一日中、チビッ子二人と遊んだりして疲れたでしょう」






 そんなことないですよ、って紗奈恵さんに返して

 湯気がたってる風呂場に行く。

 あはは、遼太君、テンション高いまま派手に遊んでたみたい。






























 湯船に浸かる。











 沈黙。













 …からの、大きな息をひとつ。



























 ため息、っていうのとは違う。

 疲れたから、っていうのとも違う。

























『(なんだかなぁ…良いのかなぁ。うーん)』
























 ・・・・・・・・・・。





























 ・・・・・・・・・・うーん





























 この半同棲状態どうよ?

 …ひと言で言えば、そんな感じ。
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