恋の移ろいは季節と一緒に(立海/丸井オチ)

□16話 冬T
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【丸井side】










 神谷が、のぼせて風呂から出てきやがった。

 なにしてんだ、っつったら

 かんがえごとしてたらちょっとー、って若干のカタコトが返って来た。







 コイツ、普段しっかりしてっけど、時々アホっぽいっつーかドジっつーか。

 まぁ、そんなトコも好きなんだけどよ。

 ふにゃ、ってなってる顔を団扇で仰いでやりながら、そんなことを思う。






 親父は書斎。

 お袋は風呂。

 チビ二人は隣の部屋でもう夢の中。











『あーもー…なんだかなぁ。ヤバイなぁ、いーのかなぁ、ほんとあたしだいじょーぶかなぁ、はぁ〜…』

「今度はなにグルグルしてんだよぃ」

『えー?いやー、もうなんかさー…ここさいきん、いっしょうぶんのラッキーっていうかシアワセ?つかいはたしてるよーなきがしてさー。これぜーったいバチあたるだろー、みたいな』











 
 ソファの背もたれに、ぐでーってなりながら酔ったみてぇにヘニャって笑って

 こーんなシアワセでいーのかなぁ、とかなんとかボヤいてる。











「バチなんか当たるわけねぇだろぃ」

『あたるあたる、ぜーったいあたる。いやーもうなんかなぁ、どーしよ。シアワセすぎてこわいんだけど。あゆみのいったことはわかってるから、もっとべつのいみでさー。あ゛ー…』











 酔っ払いは放っておくに限る。

 そんな心境で団扇を仰ぎ続けて、神谷が正常に戻るのを待った。




































 神谷をここで看病して以降、

 チビ二人を宥めるのにかこつけて、コイツをこの家に半ば同棲みてぇな形で居座らせてる俺達。







 強要とかじゃねぇし、あっちも嫌がってない。

 チビ二人と同じで、直接あの家を見たお袋も俺も、アイツをあの家に帰すのは気乗りしない。親父なんか、もちろん冗談だけどアイツを嫁扱いだし。

 そうして、なんも問題もなく今日まで来た。






 でも、神谷は「だったらもう良いや気にしない」ってなるヤツじゃねぇ。

 時々、困ったような微笑で「良いのかなぁ」って呟いてるのを知ってる。














「なに歌ってんだ?」

『歌ってるっていうよりメロディー。クリスマス・イヴを題材にしたバレエ音楽』

「へぇ」













 部屋の隅に、俺がもっとガキの頃から使ってるクリスマス・ツリーがある。

 そこにあとで、数日前に神谷と一緒に買ってきたチビ二人のプレゼントを置く予定。







 で、そのツリーの傍に、眠気眼の翔太みてぇにもそもそ移動してたコイツがなんか口ずさんでて

 火照りが抜けたタイミングを見計らって、そう聞いてみた。







 もう何年も見てきたツリー。

 昼間、チビ二人とコイツと一緒に飾り付けした。

 見慣れているはずなのに、今年は全然別のものに見える。
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