Changing
□狼と猫、可愛さ倍増!
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「うん、私も謝ってるって思ったよ。ロウって本当に素直なんだよねー」
カナタはまだ俺の背中を撫でている。どうやら、マルの言ったことを微妙に履き違えているようだ。
「謝っていると思った…ですか?カナタさん、ロウさんが何て言ったか、正確に分からないんですか?」
マルが首を傾げて尋ねる。白猫が首を傾げるとか、あざといな。
それはともかく、マルの言葉の内容の方を考える。
カナタもマルも「俺が謝っている」と思っているようだけど、その理由はだいぶ異なる。
カナタは「たぶんこう言っているんじゃないか」という推測だけど、マルは「こういう意味のことを言っている」という確信だ。
「正確に…って?えっと、私、ロウがどんな気持ちかくらいは分かるつもりだけど…」
カナタはマルと同じく首を傾げていたが、すぐに何かに気づいたように目を丸くした。
「えっ!?もしかしてマルちゃん、ロウの言葉が分かるの!?」
「えっと、意識してなかったんですけど、たぶんそういうことになるかと…」
「ガウッ!?」
マルの言ったことに対して、俺は思わず「マジか!?」と吠えてしまった。
マルはビクッとして小さく飛び上がっていたが、そんなマルをカナタは抱き抱えて話しかけた。
「マルちゃん!!ロウ、今のは何て?」
「は、はい。本当か?って…。驚いてました」
「おぉー!マルちゃんすごいっす!これで、ロウちゃんとも話せるってことっすよね!」
カナタとミスラは目を輝かせて俺を見ている。
なんか迫力がすごいぞ…。
「ロウ、ロウ!もっと、なんかお話しようよ!ほら、何か私にしてほしいこととかない?」
「ほら、ロウちゃん、ワンでもニャーでもいいから何か言ってみて!マルちゃんが翻訳してくれるっすよ!」
「ガ、ガルゥ!」
あまりの剣幕にお前ら落ち着け!と叫んでしまった。
その瞬間、カナタとミスラはマルの方をじっと見つめ始めた。
「…えっと、落ち着け!って言ってました…」
何を求められているのか瞬時に判断したらしく、マルが控えめな声で俺の言葉の翻訳をした。
2人は「おぉーっ!」と声を揃えて感嘆している。そんなに楽しいのか…。
「おい、ミスラ…。お前、魔獣に宥められてるぞ。人間なのに」
一部始終を黙って見ていたライが呆れたように言う。
「いいじゃん!だってロウちゃんとお話したかったんだもん!」
駄々っ子みたいな口調になるミスラ。
「ていうか興奮してたのはカナタちゃんも同じっすよ!アニキはカナタちゃんのことも馬鹿にしてんすか!」
ミスラがむくれながら、ライに噛み付く。カナタの名前を出されたためか、ライが急に慌て始めた。
「な!?おま、何言って…!?違うんですカナタさん、さっきのはミスラを止めようとしただけなんです!」
「え?あ、はい」
焦るライと対照的に、カナタは「え?何か言った?」ぐらいの軽い反応だ。
未だに言い争いを続ける兄妹を尻目に、俺はカナタとマルの方に近づく。2人…もとい1人と1匹の隣には、イースもいた。
「ねぇマルちゃん、私もロウの言うこと分かるようになりたいから、魔獣語も教えてもらっていい?」
「え!?……えーと、善処します…」
カナタの無茶振りに困った顔で答えるマル。ネコが困った顔をするのって可愛いな。
「カナタさん、あまり使役する魔獣を困らせないであげなさい。…でも、人間以外の存在との意思疎通…興味深いわね」
イースがカナタを諌めるが、その一方で魔獣語に興味がありそうな発言もしている。
まさか、習うつもりか…!?
一瞬、教壇に立つ白猫と、座席に着く茶髪少女とモデル美人を想像してしまい、吹き出しそうになった。