memory

□episode1 出会い
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東京 空座町



「みぃつけた。黒崎一護。」





電柱の上に立って呟く少女が一人。





同時刻



「お前明日から学校行って勧誘してこい。」


「だから何で俺やねん!」


「やかましい!大人しい学生してこい!!ハゲ!!」


言い争う男と少女。
それを見つめる仲間。



「頼むぜ…本当に」


「頼りねぇな…」









空座第一高校。
今日から新学期である。



「おーし、おら!席つけー嬉しいお知らせだ!転校生を紹介する!」

担任の相変わらずの無茶苦茶さに動揺する教室に入ってきたのは美少女。


銀髪ストレートの髪を腰まで伸ばし前髪を織姫の六花のようなピンで止めている。
長身にすらっとした手足。



ピアスをしていることには驚いたものの
そんなものお構いなしに男子も女子も穴が空きそうなくらい彼女を見つめている。


担任は黒板に名前を書かせ、先を促す。


「自己紹介よろしくー」


はーい、と言ってニコニコしながら発したその声は。


「今日からお世話になりますー、柿本 棗ゆうもんですよろしくゥ〜」


先程まで褒めてばかりだったクラスが一瞬驚く程の、強い訛りの関西弁。
自己紹介した後茶目っ気たっぷりに舌を出すと、カチャ、と舌のピアスが歯に当たる音がした。



クラスの奴等は結局、見た目と言葉のギャップで彼女を気に入ったがただ一人一護は。



(変な奴が入って来たな…)

とため息をついて、ボーッと眺めていた。


というかこれが普通である。



担任は自己紹介が済んだのを見て


「柿本の席は1番後ろだ!わからないことは近くの奴らに聞けー」

と席を指示する。


その少女はスタスタと歩いてきて、一護の左隣に座った。



座り際にニコッと微笑みながら声をかけられる。



「柿本ですーこれから頼むわぁー
えー…と」



「黒崎一護だ、よろしく」


「よろしく、黒崎クン」



丁寧に自己紹介してくれた一護を見て棗は囁く。




「…なァさっき、うちの顔見てしつれーなこと思たやろ?」



「?!」



「うち人の考えとること当てるん得意やねん、言わんでもええって」



ポカンとしている一護を見てニヤニヤする棗。


すると、

「……嘘。あんたがわかりやすい顔しとるだけや」


と言って今度はケラケラと笑い始めた。


(何なんだこいつ…)

会ったばかりで冗談を言ってくる棗に一護はどう接すればいいか分からない。




一方担任はそんな一護の気持ちもお構いなしにHRを進めていく。



「あ、そーいえば柿本もう一人の転校生知らないか?」


担任は今思い出したのか、不意に棗に尋ねる。



(転校生ってこいつだけじゃなかったのか?)


一護はこんな個性豊かすぎる奴の他にこのクラスに入って来る奴って…とまだ見ぬもう一人の転校生を哀れんだ。


しかし、棗は担任の期待をよそにもう一人の転校生の居場所は知らず

「いやァ?うち一人でしたよー」

と答えた。

「んー、そうかー…ま!いいや、じゃあ授業に入るぞー!」

担任は心配してその転校生を探しに行くのかと思いきや、適当にHRを済ませて授業に入ろうとする。


そんな担任に

「ええんかい!」

と鋭いツッコミを入れ、担任も感心する。

「おぉ!さすが早速ナイスツッコミ!」

もう一人の転校生の行方はさておき、転校早々、担任に突っ込む棗にクラス中が笑いに包まれ、クラスに馴染んだのだった。






放課後



「くーろさーきクーン、一緒に帰らへんかァ?うち、引越してきたん最近でな、色々教えてほしいんやァ」

棗は一護に一緒に帰って欲しいと声をかけた。

「…あぁ、いいぜ。」

一瞬イヤそうな顔をしたが、すぐに了解してくれた。


「一護!!いつの間にそんなに仲良くなったんだよう!ズルいぞ!」

誰やったっけ…?
覚えてへんけどテンション高い人やなぁ、と思った棗。

「ゴメンなァ、ほんなら皆また明日」
手を振りながら一護と教室を後にする。






「ほんでなーうちがその人になー」

学校を出てからよくわからない内容の話をひたすら喋り続けている棗。

(よく喋るな…:)

一護はちょっとウンザリした顔で適当に相槌を打っていたが、



「、、今よう喋る女やなーおもたやろ?」


顔を覗き込んできた際にその考えをピタリと当てられてしまった。


(何でわかるんだよ…エスパーかこいつ)

どうやら一護は自分が思っているよりもわかりやすい顔をしているらしい。

棗はそんな一護を見てケラケラと笑った。

「ようあんたのことわかっとるやろー?…なんならあんたの家族のことでも話したろか?」



!!?



今考えていることを当てられるだけでもビックリしていたのに、まさか家族のことまで知られているとは。
一護は驚きを隠せなかった。




眉間の皺を濃くして棗を見つめる一護に


「そんな身構えんでもえぇやん。家族のことゆうんはウソやけどな、あんたのことはよーうわかっとる」

と冗談だったことを告白するが、その後に言ったことは聞き捨てならない内容だった気がする。


「あんた、死神やろ」



そう言った棗の顔つきはさっきまでのヘラヘラした顔ではなく、真剣で人が変わった様だった。


「な、…何でお前がそんなこと知って…、」


「何でも知っとるゆーとるやろ。ついでに内なる虚に怯えとることもなぁ」

そう言ってニヤリと笑う棗。


「でも、お前…どこからそんなこと…!」

今日あったばかりの転校生が何故自分のことを知っているのか。
ましてや、何故死神であり、内なる虚に怯えているのを知っているのか。

「死神ゆーて、詳しくは知らんけど、あのバケモン退治しとる奴らのことやろ?まぁ、あんなだっさい服着てへんけどうちも同じよーなことしとるからなぁ」


ほれ、
と言って棗が取り出したのは。



残魄刀。



一瞬にしてボロボロと消えてしまったが、もう一つ手にしていた物は虚の仮面。




「お前…その刀…!残魄刀か!?それに、その仮面…!!!」

「斬魄刀…?あァ、白菊のことか。これについてはまた今度や。まァこれでお仲間やとは分かったやろ?本題はここからや」

棗は刀を弄びながら持ち替え、真っ直ぐ一護を見つめ、口を開く。


「手ェくまへんか?」




「な…!!何言ってやがる!!!俺は死神だ!そんな虚の仮面の事なんか知らねぇ!!」

一護はとっさのことで、ムキになりながら否定するが、棗はえー?と泣き真似をしながら

「わー酷い言われようやん。泣くでー?」

と馬鹿にしたような口調で言った。


そして今度はニヤリと笑うと、

「じゃあ言い方変えよ。…一緒に藍染倒さへんか?」

衝撃的なワードを口に
した。



「!!!!」
一護は藍染、という単語に反応し、次の言葉が出なくなった。



さっきから回りくどい言い方で攻めてきたが、結局藍染絡みだったのだ。

それを知った一護はキッと棗を睨みつけた。

「お、やっとええ顔したな。っちゅーてもうちはその藍染ゆー奴のことあんま知らんのけど、知り合いがあんたは藍染倒したがっとるやろーて教えてくれてなあ。どや?これでもうちのこと振るんか?」

棗は真顔のまま冗談の様な言葉を口にする。

「…っ!」

一護は予想外の内容に何と答えれば良いのか、簡単に受け入れて良いのか葛藤していた。

うじうじしたのが嫌いな棗はそんな一護を見て、苛つく。


「…男のクセになーにモジモジしとんねん。キショいなぁ。早よ答えろや、ボケ。」

ため息をつきながら刀を担ぎ、馬鹿にしたよう呟いた。


「…ハァ、、、あんた女の子にもてへんや…!!?」

が、ふと後ろに気配を感じた。


バッと振り向くが誰も居ない。
気のせいか…?
まァええわ、ともう一度一護を見据える


目を合わさず、拳を握っている一護を見て

(ちょっとイジメすぎたかァ?)

と思う棗。




一護は相変わらず拳をキツく握ったまま

「…1日考えさせてくれ…」

と、この短時間で出せるギリギリの答えを出した。



棗は少し不服だったが、初日やしうちもイジメ過ぎたから勘弁したるわ、と了解する。

「1日かァ、まあええわ。ほな明日なー黒崎クン」


うんとは言わなかったが近いうちにこちら側に来るだろう。



まだ時間はある、ゆっくりやればええ。



(ちゅーか、さっきの気配なんか知っとる気ィすんねやけど誰や。あないな霊圧した知り合いおったかなァ?)


疑問を抱きながら棗も家に帰っていく。


まさか次の日同じ様な誘いを一護が受けることになろうとは知らずに。
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