memory
□episode16 我慢
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一護が織姫を救出すべく、虚園へ行ってから決戦まで修行しなければ、と一度はなったものの、基本今までと変わりなかった。
若干一名棗を除いて。
棗はここ数日、ぶっ続けで仮面の軍勢のメンバーと戦っていた。
僅かな休憩を挟みながらかれこれ四日も経っている。
疲れているのも当然だったが、棗は弱音一つ吐かずにただひたすら虚化を組み込んだ実践練習をしていた。
メンバーは交代で棗の相手をし、暇な者は別の所で喋ったり、本を読んだり好きなことをしていた。
「取り敢えずここでいったん切り上げや」
「おー、真子ありがと。お疲れさーん」
「大丈夫なんかお前、ぶっ続けでやりすぎや。体壊すで?」
「はァ?分かっとんやったら黙っとれ。誰のせいや思てんねん。…ひーよー…「やめろ!わかった!オレのスパルタ特訓のせいなんはわかったからひよ里を呼ぶな!」
「真子はホンマにひよ里使たらチョロいなァー」
ニヤリと笑いながら、平子を馬鹿にする棗。
「やかましいわ」
そう言う平子も口は緩んでいて、嬉しそうだった。
棗が仮面の軍勢に入ってから、平子は笑うことが多くなった。
以前は自分たちの事で精一杯で、藍染への恨みが心の大半を占めていた。
が、百年会えなかった棗と再会したことにより心に余裕が出来たのだった。
そのため、一護がいなくなって、彼女の相手をする為、特訓の時間が増えたが、本人は乗り気だった。
「おーい!メシだぞー!」
どうやら昼ごはんが出来たようで拳西がフライパンを鳴らしながら皆を呼ぶ。
「お、やっとか。ほら、棗、食べに行くで」
後ろを向き、棗を誘ったが、返事が無い。
みると、棗がその場に倒れ込むようにして眠っていた。
「そんなに疲れとったんか…。ホンマ、素直やないなァ…」
スースーと寝息を立てて眠る棗の横に座る。
「…相変わらずアホみたいな顔やのォ…。無防備過ぎや」
寝顔を見た平子は無意識のうちに、そう呟いて棗に顔を近づけ、そっと頬にキスをした。
だが、目を開けると、何故か顔を真っ赤にした棗が目を覚まし、口をパクパクさせてこちらを見ていた。
「おまっ…起きとったんか!」
「〜〜〜〜〜〜っ!!」
言葉にならない声を発する棗。
すると、俯いて肩を震わせ始めた。
「な、何や…泣くほどイヤやったんか?しゃーけど、無防備に寝とったら、誰だって襲いたくもなるわ!!」
平子は必死に言い訳をするが、棗は顔を上げない。
これはマズイと思い、真剣な表情で謝る。
「すまんって…オレが悪かったわ」
平子がそう言うとピタッと棗の動きが止まったので、許してもらえたか、と息を吐いたが、そうではなく。
ゴンッ!!!!!
凄い音がして平子は棗に頭突きをされた。
「痛ァッ!!!!何すんねん!!棗!!!人がせっかく心配したっちゅうのに!!」
平子の声を無視して、棗は瞬歩で消えてしまった。
「…何やねんあいつ…」
そのやりとりをじっと見つめるリサ。
「…」
「真子!メシ無くなるぞ!っつーかこのままだとお前が皿洗い決定だ」
「何やて!?わかった、ちょお待っとれ!」
棗に全力で拒まれ頭突きをかまされたのには、ショックを受けたが、それも記憶喪失のため。と自身に言い聞かせ、食事を済ませに行く。
(やっぱりオレが悪いんか…?)
何度も自分の心に聞いてみる平子であった。