memory

□episode19 帰還
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四番隊舎で卯ノ花に薬を処方してもらった後、頭痛とも綺麗さっぱりオサラバした棗は穿界門の前にいた。


「あー楽しかった。偶には息抜きも必要やなァ。色んな人にも会えたし、今日からまた頑張ろっと」

そう言って門に入り現世に戻って行った。

帰りはあっという間で門を抜けると、浦原が待っていた。


「お帰りなさいッスー」


「おー、朝早いのに起きとったんか。珍しいこともあるんやな、明日変なモンでも振るんちゃうか」

早いと言っても7時半なのだが。

万年寝坊助で、研究漬けの浦原にしては珍しい。

「ヒドイ言われようッスねぇ。…それはそうと、棗サンあれほど言ったのに、お知り合いに会いましたね?」

ビクッと浦原の言葉に反応した棗。

「…あはは…つい…。」

そんな約束など忘れているかと思ったが、尸魂界に技術開発局を設立したほどの頭を持つ浦原は残念ながらバッチリおぼえていた。


「ついじゃないっスよ。全く、見つからなかったから良かったものの、砕蜂隊長や涅隊長に会ったらどうする気だったんスか!」

(おー怖。ってか、マユリには会うて危うく実験台にされそうになったけどなァ)

そんな事が言えるわけも無く。

「…何も考えてんかった」


「はァ…。砕蜂隊長なら即総隊長に密告かその場で抹殺、涅隊長なら実験台になるところっスよ…」

(うお…マユリはその通りでした…)

棗が必死に口を塞いでいると、やれやれ、とため息をつきながら浦原は丁寧に捕まったときの処分を教えてくれた。

(わかっとったけど、その言い方地味に腹立つなァ…!!)

棗が拳を握って、
浦原の話を怒りを抑えながら聞いていると突然

「あ、それより早く義骸に入った方がイイッスよ」

と言われた。
突然で意味が分からず首をかしげ、聞き返す。


「は?何でや」

「平子サンが近くに来てるんで」

「それを先に言えアホ!!」

「あいたっ!何するんスか…」


あっけらかんと言う浦原に棗は刀を投げつけ急いで義骸を着る。

平子には記憶が戻ったことは内緒にしてある。

だから今棗が死神の格好をしているとバレてしまう。


その上、尸魂界に行っていたことなんて知られたら、ひよ里は大激怒、平子は怒りを通り越して呆れてしまうだろう。



急いで義骸に入り、霊圧を遮断する。

死覇装ではない、いつもの短パン、パーカー、スニーカーの格好になる。


「セーフ!!」

と棗は間一髪義骸に身を包み、勉強部屋から出るためハシゴを登る。

後少しで上がりきろうか、という時



「おーい、喜助ェーおるかァ?」


平子が訪ねて来た。


「ナイスタイミングッスねぇ。」

「やかましい」

浦原は棗を茶化すが、棗はピシャリと反論する。

「はーい!ここにいるッスよー」


浦原が返事をすると、平子が店に入って来る。

棗は無駄だとわかっていたが、浦原の後ろに隠れた。

「朝早くからスマンのォ。棗見てへんか…ってお前ここにおったんか!」

案の定簡単に見つかってしまった。

「あはは…見つかってもーた。お早う、真子」

「お早う真子、とちゃうわボケ!一晩帰ってこんと何しとったんや!」

「あ、あはは…泊まっとった…」

泊まったのは尸魂界にやけど。

「何やて!?喜助もこいつおるんやったら電話せえや!」

「だって電話して来いなんて言われてないッスから」

棗の言葉に言い返してくる平子を軽くあしらう浦原。

「アホか!帰って来んかったらどこ行ったんか心配するやんけ!」

ギャーギャーと煩い。
こっちは二日酔いやねんぞ…。


げっそりとして平子に言う。

「やかましいなァ。あんたの怒鳴り声は頭に響くねん、黙っとれ」

すると、棗に腹を立て今度は浦原に当たり始めた。


その様子を見ながら、笑いをこらえる棗。

(夫婦漫才みたいやっ…!あはは、アカン朝から笑かすな!っいたた…)

そんな笑を堪えている棗を見て、平子は
「お前が帰って来んから心配して、探しに来たったのに何やそねん!」

とキレたが

「頼んでませーん、さよーならー」

と棗は言い放つ。

悔しそうに地団駄を踏む平子を見て、余計笑いが止まらない。

(はー!こいつホンマからかい甲斐があっておもろいわァ…あはは)


「くぅううう!腹立つわァ!ほら、帰るで!」


「うわっ!離せ真子!喜助も助けんかい!」


「イヤぁアタシなんかがお二人の話し合いを邪魔しちゃ悪いッスからー。ごゆっくり!」


我慢の限界がきた平子は棗を持ち上げ、担いで立ち去るという強行突破に出た。


浦原はニヤニヤしながらそんな棗を見て、手を振る。


「喜助ェええええ!!!しばく!絶対今度会うたらしばいたるからな!!」

ジタバタと平子に担がれながら暴れる棗を見て口パクで

[た・の・し・ん・で!]

と言う浦原にイラっとして飛びかかろうとするが、担がれているのでそれも叶わず。

挙句

「やかましいねんお前!大人しい担がれとけ!アホ!」

と怒られた。
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