memory
□episode4 先遣隊の死神
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次の日から数日、織姫は学校を休んだ。
一護も毎日遠くを見つめてはため息をつき。
俯いたかと思えばまた顔を上げてため息をつき、の繰り返し。
棗は隣で見ていて、自分も仲間がいたら、平子たちと居た頃は、仲間が傷ついたときあんな風に悩んだのだろうかと思った。
織姫が平気な顔して学校に来たが、話しかけようとして躊躇って。
やっと話しかけたと思ったら謝って謝って謝って。
(…グラグラに霊圧も揺れとるやんけ)
棗も初の破面との戦いで運よく軽傷で済んだが、傷を負ったことに変わりなく、一護に謝られた。
「オレのせいだ…ゴメン…」
自分が勝手に挑んで負った傷なのだから謝る必要は無かったのに、酷く一護は気にして謝った。
(そんな顔で謝られたくて破面と戦ったんとちゃうわ、ボケ…)
棗もどこか身が入らず、元々真面目に受けてはいなかった授業をよりボーッとしながら受けるようになった。
机にうつ伏せになって悶々と考えこんでいると、妙な気配を感じた。
それもたくさん。
!!
霊圧。
(1、2…5?と離れたとこに1人か。絡むと面倒やし、退散や)
知らない霊圧をいくつも感じた棗は席を立ち、廊下へ出る。
すると反対側から騒がしい声が聞こえて、派手な五人組がこちらに歩いてきた。
「で、どこの教室でしたっけ?」
「知らなーい」
「いやホラ、向こう出る時メモ持ってたじゃないスか」
「…あァ、無くしちゃった♡」
「なく…ちょっと!!何してんスか!!」
「ガタガタ言うなよ、霊圧探りゃいーだろが」
(あいつらか…絡みたくは無いけど一護の知り合いなんやったら一回拝見させてもらお)
霊圧を探ったところ、全員死神であることがわかったので遠くから様子を見ることにした。
五人は周りの声を無視して(若干絡んでいるやつもいたが)教室に入って行った。
「おーす!元気か、一護!!」
そう一番に声を掛けたのは変な刺青に赤髪ハチマキというこれまた一護に負けず劣らずの派手な奴だった。
「…れ…恋次!!一角!!弓親!!乱菊さん!!冬獅郎!」
「日番谷隊長だ!!」
ハゲに黒髪オカッパ、巨乳の金髪、白髪のチビ。
最後に名前を呼ばれた白髪のチビはどうやら隊長のようで、これには棗もビックリした。
一応死神のことは一通り浦原に聞いてはいたが、実際に本物の死神を見るのはこれが初めてで(今見ているのは義骸に入った姿だが)初めて見る隊長の幼さに衝撃を受けたのだった。
(へー、白髪のチビでも隊長か…)
頭の片隅に覚えておこう、と思ったが
棗は本当に記憶力が悪かった。
これは記憶が無いとかそういうこと問題ではなくて、興味の無い事に関しては次にそれに出会ったとしても殆んど覚えていないのだ。
一度興味が無くなると思いだすことが困難になる。
だからこのクラスでも転校して来てから色んな人に話しかけられたが覚えているのは、一護と織姫と佐渡、たつきくらいだった。
石田は霊圧を感じなかったので、滅却師だとは気づかなかったし、棗は覚えていないどころか覚える努力すらしていなかった。
棗は初めて見る一護以外の死神に多少興味は持っているが、白菊が騒がないということはそれ程でも無いのだろう。
一護と死神の様子を見ていると急に一護が振り返った。
その目線の先に居たのは
「…ルキア」
「…久しぶりだな一護!」
ルキアと呼ばれたその少女もまた死神であった。
窓の淵に立って、腕を組んでいるので偉そうやなァと思っていたら一護にキックと往復ビンタを食らわせ、よくわからないグローブで一護の魂魄だけを抜いて死神姿になった彼を連れてどこかへ行ってしまった。
「騒がしいやっちゃなァ…落ち着いて行動出来んのか。って、それはうちもか」
扉の陰でその様子を見ながらふと呟く棗
残りの死神は魂が抜け、空になった一護の体で遊んでいた。
ハゲの奴は野次馬が発した「ハゲ」という単語に反応して木刀を抜こうとしていた。
(どんだけ短気やねん…アホやな)
一連のやりとりを見た後、棗はその場を立ち去った。