Till when should I wait?

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喜助さんに連れて来られた先は言っちゃなんだが、ボロい店


屋根には浦原商店と書かれた看板が乗っていて、一目で喜助さんの家だと分かった



「ここでちょっと待ってて下さい」

そう言うと喜助さんは部屋の奥へと行ってしまい、私はルキアと二人っきりになった



話すことがなくて気まずい雰囲気に耐えられなくなったルキアがそれを打ち破った



「あの、華殿」

「…なーに」

面倒くさそうにそう言う私に怯みながらもルキアは先ほどよりはしっかりした目で私を見ながら問う



「先程もお聞きしましたが、あの男は一体何者なのですか?」


ルキアの言いたいことはわかる。
いきなり出て来た華の知り合いで、見た目は見るからに怪しいし飄々した態度も疑いの対象
仲間も子供が二人と三つ編みのおっさん

そんな奴によくも一言も突っ込まずここまで来れたもんだ
あの人なら絶対じゃあ行きますか、ってなった時点で突っ込んでたね



私は一人そう呟いてから、あることを思い出した


そのあの人たちの霊圧を感じるのは気のせいか、と







現世に来たときからずっと感じてた、あの人たちと同じ数の霊圧


何でか知らないけどモヤがかかったようにハッキリとは感じ取れない



そうなのかもしれないけど、その霊圧には何か違うものの霊圧も混じってたから





私が探ろうとしたら消えてしまった
誰だったんだろう、と首を傾げてボーッとしていると



「…殿!華殿!!」


「あ…何?」

「ええ!?…まさか意識が飛んでおられたのですか?」

ルキアが心配そうにこちらを見ていた
私は悪びれもなく口先だけで謝った

「うん、そーみたいごめんね」


「あの男のことですよ…」


ルキアにそう言われて思い出した

そうそう喜助さんのことを話していたんだっけ


「あの人は私の昔の知り合いだよ。腕は確かだから義骸のことは心配しなくていい。…ま、ちょっとヘンタイだけど」



「ええ!?…あ、…その義骸を使うことになったのも私の軽率な行動のせいでしたね…すいません」


ルキアは俯き、私はそれを見つめる



私は聞かれたから説明しただけなのに、ルキアは自分を責めて謝る

別に怒ってないのに
何で謝るの?


「ルキア、別に私怒ってないよ。…それより楽しそうじゃない?」


私はそんなことこれっぽっちも思っていないくせに、心とは裏腹に口からは流暢なでまかせが出てくる

「華殿…?」

「だって私もルキアがあの少年に力を渡そうとした時はビックリしたけど、いざあの子が死神化してみるとさ、何か霊圧がビリビリ来てワクワクしたの」


ワクワクなんて、最後に感じたのいつだったかなぁって考えながら。



けど


「…それにそのおかげで喜助さんと久しぶりに会えたし、良いんだ」


その後に言った言葉は本音。
喜助さんは私の霊圧を感じて姿を現してくれたのかもしれないけど、素直に会えたことは嬉しかったから




私が奥に義骸を取りに行った喜助を見つめながら呟くと、ルキアはこちらを見てグッと唇を噛んだ




何でそんな辛そうな顔してるの?
別に私が踏み込まないだけで全然喋ってくれていいんだから



「華殿…」


ルキアは泣きそうな顔で私を見つめると名を呼んだ


「何?」

私がルキアの眼を見つめ返しながら聞くと


「ありがとう、ございます」


ルキアはそう言った



「…どういたしまして。でもそれは喜助さんに言って。…私はただ見てただけで何もしてないし、何もする気はなかった。ルキアが死にそうだったのに、だよ。…私はそういう心の持ち主なの」

私は遠くを見つめ、表情豊かだった昔を思った
喜助さんに会えたから余計に感傷的になってるのかもね


久しぶりだ
こんな感じ。ドクドクするっていうか
珍しく心臓が機能してるみたい


「…私はそれでも構いません。華殿のことは尸魂界でも良く聞いていましたし…」

そしてルキアは言いにくそうに続ける

「…貴方は仲間をなくされたのですよね」

私はルキアを見て答える

「…そーだよ。それが喜助さんとテッサイさんなの。私は百年振りにさっき、二人に会ったんだよ」


「百、年…ですか?」


これには流石にルキアも驚いた


そうだよね、百年なんて馬鹿らしくて待ってられないって自分でも思う



…私ももう、待ってはいなかったし



喜助さんと会えたのは偶々で、そんなことじゃ私の心は揺らがなかった。
随分と荒んじゃったもんだと自分でも思う


「…強いのですね。」



ルキアはそう言ったけど、私はそうは思わない。
だって

「…そんことない。強かったらこんなことになってないもん」


そう言って私は自分の顔を指指した
ルキアはまた申し訳なさそうに俯き、謝ってきた


「だから、もういいってば。私はこんな顔してるけどルキアが嫌いな訳じゃないから」



嫌いなわけじゃない。


けど、好きでもない。




自身に言い聞かせるように、百年、人と関わる度心に決めていた



別れが辛くなるだけだから、深入りはするな。
心を許すな





さっき喜助と再会したことで、気持ちが緩んでいるのかもしれない



気を抜くと久々に会えた、兄のような親のような、喜助さんに飛びつきたくなってしまうから。




そんな様子をルキアは何とも言えぬ表情で見つめたあと、再び足元に視線を落とした


すると、喜助がガシャガシャと音を立てて帰ってきた

「いやー、すいません。あまりにも部屋が汚くて何処にあるか探すのに手間取っちゃいまして…」
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