Till when should I wait?

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目が覚めると、目の前には心配そうに私の手を握り俯く乱菊が居た



「乱菊…」


そう声をかけると勢いよくこちらを向いたのは幼馴染で親友の十番隊副隊長。


「華!大丈夫なの!?」






「ごめんね…」


返す言葉が他に無くて、それだけしか言えなかった。


でも

「バカ…本当にバカなんだからあんたは」



乱菊は涙を流して私を抱きしめてくれた



あぁ、良かった
乱菊を一人にしないで済んだ
生きてて、良かった



私はこの時、改めて乱菊の私に対する存在感の大きさを感じ取った



それが嬉しくて。
心から安心して。
私の目からも一筋の涙が零れた






私はあの後、四番隊に運ばれた。
でも、刀で貫かれた挙句、治りかけの体で斬魄刀の能力を使ったことで、傷は悪化し治療は難航した



おかげで卯ノ花隊長の力でも綺麗に跡は消えてくれなかった




私の胸の真ん中にあるのは、あいつが残した刀傷






傷はもう痛まなかった。




痛いのは、心。







卯ノ花隊長は胸の傷をボーッと
無言で見つめる私のことを察したのか


「この傷は一生残ると思いますよ…」


と申し訳なさそうに言った。
卯ノ花隊長は私に傷跡が残ることと、それを付けたのが私と仲の良いギンだったことを気にしてくれたのだろう


けど、そんなことはどうでもよかった




ギンに刺されたこと。
それだけが何時迄も頭をぐるぐる回っていて。
嘘でもいいから自分の身体を貫くのがギンの神鎗だと信じたくなかった





傷痕の上に重なるようにして首から下がっている乱菊とお揃いのネックレスに触れると、それを繋ぐ鎖と擦れる音がした




あァ、そう言えばこれはあいつが残した唯一の物だった
死神として働き始めて一番初めの給料日、初めて私たちにくれたプレゼント


そんな優しさや楽しい毎日だってあったのに、今では遠い昔のことのように感じる


いや、実際遠い昔なんだけれど。





そこで思い出したように先程のことに考えを凝らす




仕返し、か。
何をしたら私の心は満足するのかな。
ギンに帰って来てもらったら?
ちゃんと説明してもらったら?
真子さんと再会出来たら?





きっとそんなんじゃない。





ギンは何だか知らないけど、私と乱菊の知らないとこで勝手に何かを決めて、そのために藍染と虚園に行ったんだ。




でも、それが何なのか。
私たちをこんな目に合わせてまですることなのか




「…はぁ」


私は無意識のうちにため息をついた




「あんたらしくなわね」


乱菊にバッチリ聞こえていたようで、真剣な顔で言われた





「全部吐き出しなさいよ」



「…え?」



乱菊の意外な発言に私は目を丸くした



だって、何時もは私が何かに思い悩んでいても酔っ払ってる時以外は触れないように気を使ってくれるから。




でも、今日は違くて。




「…ため息、ついていいから。泣いてもいいから、お願いだからこれ以上一人で抱え混まないであたしにも、ちゃんと言ってよ。じゃなきゃ、あんたもギンと一緒よ。ここにいるけど、いないのと同じ」




「乱菊…」


「…あんたは平子隊長たちがいなくなってから可笑しくなった。自分で勝手に決めて気づいたらあたしの知ってるあんたじゃなくなってた。…もう、あたしは黙って置いてかれるのはゴメンなのよ…ちゃんと思ってることは言ってから消えるなり変わるなり、行動して」



乱菊の言葉が心に刺さる。




何にも言わずに一人で抱え込んで。



こんなに頼られるのを待ってくれてる親友がいたのにね。









ありがとう。






こんな私に優しくしてくれて。






私は乱菊をギュッと抱きしめ、もう一度ありがとう、と囁いた





そうすれば乱菊は微笑んでくれる





貴女の笑顔を守るために
私は変わろう




何時迄もこんなんじゃダメだ
過去に囚われてばっかりで動こうともしない





ギンがいなくても乱菊がいる
真子さんがいなくても、藍染が裏切り者でも、ここには私を助けてくれる沢山の人がいるから。




大丈夫、
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