memory
□episode20 涙
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平子は一人アジトに戻っていた。
猫背の背中がいつもより曲がり、俯いたまま中に入っていく。
「あ!真子!棗見つけたんか!?何処や!!」
帰るなりひよ里が叫んだ。
「…知らんわ、ボケ」
そんなひよ里に覇気の無い声で答える平子。
しかしそんな言葉でひよ里が満足するわけも無く。
「何やて!?あんたが探しにいく言うから、イヤイヤながらもうち譲ってんぞ?やのに連れて帰って来られんかったてどういうことや!」
「…やかましのォ…どないでもええやろ」
いつもならひよ里の言うことなす事全てにいちゃもんをつけてくる平子が今日は適当な返事で流そうとする。
他のメンバーも平子の様子にはおかしいと思いながらも棗が帰って来ないことを心配していた。
「ねー何で棗っち帰ってこないのー?今日は新しく出来たお菓子屋さん行くって約束だったのにィィー!」
「うるせぇぞ、白!菓子屋なんか一人で行け!っつーか、今日から訓練再開するって言ったじゃねえか!」
「棗が約束を破るなんて今迄無かったのにねぇ…」
「まだ寝てんじゃねぇのか?」
「そんな簡単な問題デハ無い気もシマスが…」
各々が思ったことを口にする中、ただ一人、リサだけは何も言わずじっと平子を見つめていた。
「うちはそんなこと聞いてへんねん!あんたのことはどうでもええ!けど棗は女の子なんやぞ!昨日の間に何かあったんかも知れんやろが!!」
「…そないなワケあるか」
ひよ里の言うことを覇気は無いながらもキッパリと否定する平子にひよ里はイラつきを覚える。
「じゃあ何で帰って来ぇへんねん!あんた何か知っとる言うんか!!そもそもどこ探してきたねん!」
「ちゃんと会うたわ。けど、今日は来ぇへんやろ…」
「はぁ!?どういうことや!何か用事でもあるんか!うち聞いてへんで!!」
「知るかボケ。…それよりオレも今日は抜けるわ」
「真子までどうしたんだよ」
急に予定でも入ったのか、と思いラブが問う。
「まァな。そういうことやから今日も一日自由にしようや。ほなな」
帰って来たときと同じ調子で俯いたまま、建物から出ようとする平子。
だが
「ちょっと待ちやあ、真子」
リサに止められる。
「…何やねん、リサ」
振り向きもしないで答える。