【3】

□できない相談とできる親友
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「…恵ちゃん、男前」
「………でしょ?」
「どこかのヘタレてる人と大違い」
「夕歩、その言い方止めてくれない」
「で?」
「『で?』って?」
「話の続きとかオチは?」
「………今のがオチでしょ?」
「恵ちゃんがぼんやりしてて、ゆかりが腑抜けになった理由がわからない。…あ、ゆかりは最初からそうか」
「何だか凄くひどい事言われてるのは気のせいよね、夕歩」
「ううん、その通り」
「……凄く柔らかかったの」
「うん?」
「……しかも、増田さんから繋いでくるとは思わなかったし」
「ああ、なんだ。キスしたのかと思っちゃった」
「そそそそ、それはまだ早いでしょ!」
「え?なに?手繋いだからってゆかり腑抜けてるの?」
「夕歩、今、私、友達止めたい気分」
「いいけど、恵ちゃんとの接点減るよ?」
「本当にいい性格の友達で有り難いわ……」
「ありがとう、私もゆかりはいい友達だよ」
「…………あれってどういう意味だと思う?」
「あれって手繋いだの?」
「そう」
「手くらい私だって恵ちゃんと繋ぐよ?」
「……………………………………」
「だけど、まあ、それは本人に聞くのが一番だと思うよ。ね、恵ちゃん?」
「え!?」

ドアの向こうから聞こえて来たのは『ふぇっ!?』と言う聞き覚えのある声。
それから数秒してからドアが開いて姿を現すから全力疾走で逃げたくなった。
夕歩を横目で睨めば素知らぬすまし顔。

(『いるの気付いてたんでしょ!』『なんのこと?』)

視線だけで夕歩と会話して、今度はもう一人のこの部屋の主に視線を移す。

「…ただいま」
「………おかえりなさい」

その頬や耳が真っ赤で。
自分のそれとどっちが赤いだろう……、なんて考える。
…どこから聞かれてたかなんて、考えたくもない。

「恵ちゃん、ゆかりが質問があるって」
「ちょっ!夕歩!!」
「…はい、なんでしょう」
「う………」
「後はお二人でどうぞ」

そう言った後に立ち上がるから慌ててその腕を掴む。
待って、逃げないで!
と、言うよりも側にいて!!

「…ゆかり」

だけど、夕歩は人の耳元で囁くとあっさりと部屋を出て行ってしまう。
……………え?

「……染谷さん」
「はい」
「……………顔、真っ赤だけど大丈夫?」

首をかしげて人の顔をのぞきこんでくるから。
その瞳を見つめ返して、それから自分の左手を見る。
…………ああ。

「……昨日、楽しかった」
「ん?う、うん、私も」

まだ、増田さんの柔らかい手の感触が残ってる気がして。
……彼女もそう思ってくれてたら嬉しいけど。

「今度はどこに行こうか?」

ふにゃり、と笑う顔も赤くてその顔につられて頬がゆるむ。

「……貴方がいるなら何処でもいいわ」

ああ、なんだ。
彼女も一緒のことを思ってくれてたのかも知れない。


















−恵ちゃんがぼんやりしたまま、自分の右手見つめてる理由がわかっちゃった…





END
(12/06/01)
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