【3】

□Hit Me With Your Best Shot
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「…えーっと?」

部屋に帰ったら染谷がもうスタンバイされてまして。

「そ、染谷……さん?」

なぜか凄い目で人を睨んで出て行く綾那(なぜか心底疲れたようにげっそりしてた)と染谷を見比べて。
……………まあ、うん、床にいきなり押し倒されたのはいいとして(いや、それも良くないけど)。

「…舐めて」

なぜに足蹴にされて脚を舐めろと言われているのでしょう、わたくしは?

「どうしたの?染谷」

とりあえず足蹴にされたまま、頭を踏まれたまま。
何かあたし、悪いことしたっけ?って考えても心当たりがありすぎて分からない。
(それでも最近はお利口さんにしてる方だと思う)

「…こういうの」

グリッ、と力を入れるから耳の軟骨の辺りがごりごり痛い。
あー、痛いイタイいたい!

「…好きでしょ?」

………………なんか悪いもん食べた?
一体、何の影響を受けたんでしょうか?

「……嫌いじゃないけど」

ここでこうプライドが…!とか、ならないのは染谷を愛してるからか、あたしがMだからなのか。

「…どうせならボンテージとかでヤッてほしいかなぁ、とか」

もしくはあたしがエロい人間だからか。
跪いて脚舐めるくらい、お望みなら何時でもするけどさ。
確かに染谷はSだろうけど、まさかこんなプレイが好きだなんて思わなかったけどさ!
けど、染谷の女王様は特上に似合うだろうと思うんです!

「…何?それ」

あー…、ご存じない、と……。
ポケットから携帯を出して画像フォルダから一枚。

「こういうの」
「ああ……、そう言えばこういうの着てたわね」
「着てたって誰が?」

うん、普通に会話してるけどあたしまだ染谷に頭踏まれたままだからね。
そのまま視線を少しだけ上にずらしたら本日は薄いピンクのトレジャーが見えましたけどね。
何でもいいからさっさとあたしをその宝島へ連れて行って。

「貴方のコレクションの人」
「あたしのコレクション?」
「DVDの」
「………………………………観たの?」
「観たわ」
「………………………………」

ああ、うん、あった、こういうヤツ。
頭踏んでるボンテージおねーさんのヤツ、あった。
……って!

「何で染谷があんなの観てんの!?」
「そっちこそ、私じゃ足りないなら足りないって言えばいいでしょ!」
「ほわーっつ????」

誰が染谷で足りないなんて言った!
これ以上にあたしを燃え上がらせるぼでぃなんてこの世には無いのに!

「足りないからあんなの観てるんじゃないの?」

…………………はい?

「私じゃ使えない、って綾那が言ってたわ」
「綾那ぁぁぁぁ!」

あいつ帰った来たら果たし状叩き付けてやる!!!!

「使えるに決まってんじゃん!てか、染谷しか使ってないし!!!」
「ところで、その『使う』ってどういう意味?」

……意味知らずに言ってたんすか、染谷さん?
あれだよ、ほら、食事をするのに主食だけじゃなくて副食がいるって言うか…。
夕歩はみんなのおかず的な……。(こういうと夕歩使ってるみたいだけど、使ってないから!)

「私じゃ満足してないの?」
「………とりあえず話し合いませんか?あと、頭の上から脚をどかしていただくと嬉しいです」
「…満足してないから、あんなのばかり観てるんじゃないの?」

ごりり、とまた軟骨が痛いけどとりあえず辛抱。
ピンクのトレジャーを通り過ぎて顔を窺えば……あー、なんか心細そうな顔。

「愛してるのは染谷だけだし使うのも染谷だけだし満たされすぎてて幸せすぎてあたし今すぐ天に召されそうな勢い」
「じゃあ、このいかがわしい物の山は何よ?」
「本能です!そういうの眺めてると楽しいんです!」
「それが私じゃ足りてないって事でしょ!」
「足りてるって言ってんじゃん!もし、足りないって言ったらどんなコトしてくれんの!」

言った後に自分の失言に気付いた。
うん、今のこれもたぶん、サービスの一環だとは思うんだけど。
確かに好きです。
このまま染谷の脚舐めるのもおーるおっけー!ですけど…。

「…足りるまで好きな事していいわよ」

……………すいません、淫魔としては情けないコトなのですが今現在の時点で満足すぎて今すぐイけそうです。
どんだけ早漏なんだよ、あたし!

「じゃあ…」

とりあえず、って染谷の足首を掴んで少しだけ浮かせて脚の下から抜け出す。
だけど、姿勢はそのまま染谷の足元に跪いたまま。
染谷の足の甲に唇を押し付ける。

「…あたしも染谷も満足するコースでいきましょうか?」







あのさ、『足りる』とか『足りない』とかの問題じゃなくてさ。
『満たされてる』か『満たされてないか』の問題だと思うんだよね。
…あたしはもちろん前者に決まってるけど。















「……全力で来ていいわよ」
「…つか、もう、その言葉であたしノックアウトなんだけど」



































「無道ぉぉ!表に出ろ!」
「よし!お前こそ表出ろ!返り討ちにしてやる!!」



「……ゆかり」
「ん?なに」
「何で綾那と順、全力で喧嘩してるの?」
「何だかおかずがどうこう言ってたわよ」
「……夕飯の話?」
「夕歩の話みたいだけど」
「私?」




END
(12/09/17)
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