夕歩が野良順を拾って持って帰る話シリーズ

□夕歩が野良順を拾って持って帰る話E
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【夕歩が野良順を拾って持って帰る話E】






おお、晴れた。
昨日の雨が嘘みたいに快晴の空を見上げて。
ソファーで(目隠しで手錠かけられて)寝たわりにはよく寝れたし。
まあね、朝から何か窓から入って来たりしたけどいい朝だと思う。




丁寧に洗濯物を干して。
あ、そろそろご飯が炊ける頃だ。

「もうすぐ出来るよ」

出勤の準備をしてる二人に声をかけて。
もうおかずはテーブルに並べてるから、あとは炊きたてご飯と熱々のお味噌汁。

「…美味しそう」
「本当ね」

テーブルについたお姉さま方に熱いお茶をお出しして。
箸をとって聞こえた『いただきます』がはもってたのがなんか可愛い。

「料理、結構得意なんだよねー」

ついでに余分に作ったおかずとご飯をお弁当箱に詰めながら(お揃いのお弁当箱って所がまたなんか、もう……ね?)、二人の顔を窺う。
気に入っていただけますかね?

「美味しい、順、凄い」

にっこりと。
先にお褒めの言葉をくれたの飼い主様の方。

「へへっ、ありがとうございまーす」
「確かに。美味しい」

言いながら空のご飯茶碗を差し出したのは染谷さんの方。
お、よく食べますね。
嬉しいじゃないですかー。

「おかわりある?」
「あるよ。いっぱい炊いちゃったから食べて食べて」

……習慣て怖いなー、とか。
気付いたのが米をといでる途中なんだから仕方ない。
女二人で米5合を朝から平らげるって……なかなかの食欲だよね。
いや、違うよ。
朝から全部食べるんじゃなくてお弁当用の分とかもあって。
……………って、いやいや、今は考えないぞ。
飼い主さまたちの『ご馳走さま』を聞いて茶碗を片づけながら心に誓う。

「…朝からこんなにしっかりご飯て久し振りかも」
「普段、軽くしか食べないから」
「あー……そんなもんかな…」

うちは毎朝、しっかり食べないとダメだから。
『パンじゃダメなの?』
『朝はご飯だろ』
なんて、自分は作らない癖してさ。
…………あいつ、ちゃんとご飯食べたかな。
めんどくさいから、とか言って立ち食い牛丼とかですましてないかな。
だ・か・ら!
考えない、考えない!

「ねー、順」
「んー、なに?夕歩」
「お弁当、嬉しいけどそんなに大盛りいっぱい食べられないよ」
「どれだけ、ご飯押し込むのよ」
「あー………ですよねー………」

なんだろう。
あたしの習慣、もうすでにあいつに染まってしまってる……。

  
  
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