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□It takes two to tango
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【It takes two to tango】
― ご相談があります
珍しく真面目な顔で現れたお庭番は開口一番にそう言った。
順の事は評価してる。
外見も中身も(中身はちょっとアレだけど)いい方だと思ってる。
……それでも、未だに順とゆかりが付き合っている事に違和感を感じる。
「染谷はほんとにあたしのコトが好きなんでしょうか?」
だから、順がそう言い出した時に思わず大きく頷いてしまった。
「うん、私もそう思ってた」
「夕歩さん夕歩さん。そこはほら、嘘でも『ゆかりは順のこと愛してるよ』とか言ってあげるべきだと思うんですけど」
「気休めが欲しいならあげるけど?」
「……うちの姫、きびしいですね」
大袈裟に項垂れて。
いつものオーバーリアクションが今日は本気のものらしくて。
「……本当に順、ゆかりが好きなんだね」
口を出たのはそんな言葉。
ああ、順が本気でへこんでる、って。
「そのしみじみ言うの止めない?そりゃ、好きじゃなきゃ付き合わないし」
「私に対するドッキリとかじゃないよね?」
サプラーイズ!
…順ならやりかねないけど、そのもう一人の片割れが順のおふざけに付き合うはずも無いし。
「証明するにはナニすればいいんですかね?あれですか、夕歩の前で染谷にチューとかすればいいの?その際、殴られても愛なのか嫌がられてるのかは定かじゃないけど」
「見たくないからいいよ」
「あたしだって友達のイチャついてる姿なんて見たくないよ」
そう言って少しだけ顔を顰めたのは何かを思いだしたからだろうけど、順は口にしなかったから私からも何も言わない。
「順が言った通りに好きじゃなければ付き合わないでしょう?」
「今更なフォロー、どうもありがとうございます」
「それにゆかりの方から告白してきたんでしょう?」
「あー……うん、確かにそうですけど」
なぜか歯切れの悪い言葉を返してくるから首をかしげて。
何度聞いても順とゆかりが付き合い始めた理由がゆかりの猪並のアタックだと言うのが不思議で。
てっきり、逆だとばかり思っていた。
…冗談でからかう事はあっても順が本気でゆかりを口説こうとする姿も想像付かないけど。
「でも、ほら、付き合ってみたら本性知っちゃってどうでも良くなったとか」
「今更ゆかりが順のどんな本性を知るの?」
「もしくは付き合うってコトへとの熱の入れ方が違うのか」
「ゆかりに何か言われたの?」
なぜかマイナスな思考は順らしくない。
……ううん、順らしいと言えば順らしいのかな?
「言われては無いけど……スキンシップとか好きじゃないし、染谷から触ってきたりとか少ないなぁー、とか。あ、性的な意味じゃないよ。ふれあい広場では別だから」
― ふれあい広場?
疑問に思って聞き返すと慌てたように『忘れて』と言うから、その通りにとりあえずそれは置いておいて。
「もうそこまで言うならゆかりに直接言えば?」
「夕歩さん、男らしくてお庭番惚れ直しそう。一生ついて行きます!」
「そうやって茶化すなら話聞かないよ」
「染谷に聞けるなら聞いてるし、聞いて解決するようなモンじゃないの!なんでそんなトコ男前なの、夕歩」
「むしろそこでへたれてる順の方がおかしいよ」
「…………おかしくない、とは思うんですけど」