【5】

□Closer
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【Closer】







あなたには太陽みたいな笑顔が良く似合う









一秒毎に色を変える瞳はそれでも、どの色でも暖かい色をしていて。
一秒としてジッとしてはいられないと言うように動く手足は見ているだけで心を浮き立たせてくれる。
真剣な顔をして見せて、それでも唇の端や瞳を何時までたっても明るいの夏の太陽みたいに輝かせて。
その端々から『笑み』を滲み出させてる。
しばらく、滲み出す温度を熱に浮かされたように見つめて、笑う瞳に見つかった途端に視線を逸らす。
赤くなった頬は夕日のせいで。
笑う顔が太陽みたい、なんて苦手な光に見惚れてしまう。
夏の暑さは夏の太陽は体力を奪って、まぶしくて仕方ない。
それでも、無意識に見上げてしまうのは誰かを連想させてくれて、そして温かくしてくれるから。


夕暮れの散歩は涼しくなっていくこの時間、太陽が消えていくこのくらいの時間にするのが習慣になっていて。
まだ歩く道は昼の暑さが浸透したままだと言うのに隣を歩く足は跳ねるように軽快で。

― もう少しだけでいいから

跳ねるように踊るように動く度に揺れる髪を目だけで追いかけて。

― 後、少しだけ

太陽が消えていく夜空に交代で現れた星空を見上げて

― 見つけた

何時もそう言うのは彼女の方。
太陽みたいな笑顔で見つけたお月さまを指差して、私みたいだと言うから。
太陽から逃げ続けてるお月さまには私はなりたくないから。
もう少しだけ近づきたい、そう思ってしまうのは私の我侭なのか。
それでも差し出す指先は躊躇ったまま、薄闇になってしまった今は彼女に届かないかも知れない。
見つけてもらえないかも知れない。


あなたは特別だから。
他の人とは違うから、だから……もう少しだけ近づいて。


ぴょんぴょん、跳ねるように歩いていた足が不意に止まって。

「まだ暑いけど…」

躊躇ったまま、控えめに差し出した手を指先を握られて、自分の指に絡められる指の熱さに驚いて。
すぐ隣に感じる熱はまだ暑く暑くこもった空気の中でも心地いいのが不思議で。

「引っ付いてもいい?」

呼吸や鼓動ですら感じられる距離で、また何時もの太陽みたいな顔で笑うから瞼の裏に光が焼きついて、目をくらませる。



― All I want to get it,

― A little bit closer



ただ引っ付きたいだけだから……もっと近づいて。













「……はい、喜んで」











もう少し
もう少しだけでいいから
……あなたに近づきたい 




















「わんわんの指、冷たくて気持ちいいー」
「さ、猿楽さんの手の方が気持ちいいです」





END
(13/08/12)

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