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□”Love is when mommy gives daddy the best piece of chicken.”
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【”Love is when mommy gives daddy the best piece of chicken.”】





質問者:久我順

解答者:染谷ゆかり



「染谷さーん」
「何よ」
「『愛』って何ですかー?」
「また変なドラマか漫画でも見てたんでしょう」

夕飯の買出しのお供は大抵夕歩にだけど。
『買出し手伝って』なんて染谷さんの方に声をかけられる時はこんな風に重いモノを買い込む時。
(知ってるけどね、このワインも焼酎もほとんど染谷さんが飲み干すことは)

「最近のお子様は『愛』なんて検索一つで学ぶものなんじゃないの」
「おー、結構辛辣なお言葉。実地で染谷さんが教えてくれてもいいんですよ」
「『愛』と『SEX』が一緒と思ってる所がお子様なのよ」

さらり、とその単語を口にして照れも何も無いってそんな染谷さんにこっちが照れて。
それでも、確かにたかだかそれだけの言葉に照れてるあたしはお子様で、染谷さんは大人だって実感させられる。

「じゃあさー、それじゃないなら染谷さんにとっての『愛』って何?」

それこそ単語一発、『夕歩』とかで返ってくると思ったのに染谷さんの返事はなかなか無くて。
あー、さすがに手が痺れてきたー!と顔を顰めればこれまたサラリとあたしの持ってる袋と自分の袋を入れ替えてくれる染谷さんは大人。

「お供は綾那にすれば良かったわ」
「綾那とあたし、腕力同じくらいだけど」
「綾那ならそんなくだらない質問して来ないから」
「ま、それはそうですね」
「あと、綾那は重くても我慢して平気な顔し続けるから」
「無道さん、紳士」
「強がってるの分かってて触れないでおいてあげるのも大変なのよ」
「なるほど、染谷さんだって気使ってんだ」
「そういうことじゃないの?」

染谷さんの身長はあたしよりも低いから、それに今は重い荷物を持ってるから歩く速度はあたしの方が速くて。

「何が?」

だから、染谷さんの歩調に合わせてゆっくりと歩いて。

「『愛』って」

……その足が思わず止まるのは解答の意味がよく理解できなかったから。

「え?なに?綾那と染谷さんに愛があんの?え?夕歩じゃなくて?」
「何で綾那限定なのよ」
「だって、染谷さんの恋人って夕歩じゃん」
「だから……ああ、そうね、あなたお子様だから」

ムッとしながら、それでも自分の持った袋と染谷さんの持った袋を入れ替えて。
またズシリと腕にかかる重みにやっばりつい顔を顰めてしまったあたしはお子様なのか。
それとも、強がって顔に出さない染谷さんや綾那の方が大人なのか。

「顔に出されなくても『ああ、重いんだね』ってバレんのにね」

強がんなくても二人で交代で持てば負担は半減なのに。
大人気ないのはどっちだよ。

「だから…」

またさっきと同じ言葉を今度は呆れに笑いをプラスして。
あ、こういう顔であたしに笑いかける染谷さんってレア。


「そういうことでしょう?」


『でしょう?』とか聞かれても、あたしにはイマイチそれの意味が分かりません。






   
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