突発的大人パラレル

□友人はときに時間泥棒になる
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【友人はときに時間泥棒になる】




「無性にセックスしたくなる時ない?首を鳴らしたくなるみたいに」







…まず思ったのは『染谷酔ってんなー』ってこと。
人がエロネタを振れば怒る癖に、たまにこうやってその手のネタを振ってくるのはこの友人の謎な所。

「すれば」
「誰と?」
「恋人」
「別れたわよ」
「マジ?聞いてないし。……あ、だから今日酔ってんだ?」
「別れたの一ヶ月くらい前よ。……いや、三ヶ月だったかしら?」
「どんだけ適当なの」

友人の恋について関心が薄くなったのは大人になったからなのか。
子供の頃みたいに『つきあい始めた』だの『別れた』だの在り来たりな話題すぎて。
結婚したも離婚したも『あ、そうなんだ』で終わる話題だと思う。
ソファーにだらっと座る友人の前の恋人って………どれだっけ?

「あの造園業の人だっけ?」
「それその前」
「じゃあ、不動産の…」
「それ、そのずっとずっと前」
「どれ?」
「どれでもいいわよ」
「ワインならあるよ」

染谷の手元のグラスが空だったから、キッチンのテーブルに座ったまま冷蔵庫を指さす。
ラップトップに向かったまま、こっちは仕事中だから飲み物はコーヒーで我慢。

「あなた、ワイン嫌いでしょ?」
「元カノが置いていった。大げんかして出て行ったからもう取りには来ないと思う」
「聞いてないわよ」
「そうだっけ?」
「原因は?」
「『プレデターに似てるよね』って言ったら笑ってたからギャグの通じる子だなー、と思ってたんだけど。後日、凄い勢いでご立腹されまして」
「何で?」
「『プレデター』で検索かけたみたい」

くっくっく…、と。
肩をゆらして笑うから、ディスプレイから目をはずして友人を睨み付ける。

「だって髪型似てたんだもん」
「あなたの趣味がよくわからない時があるわ」
「趣味?映画と仕事のお酒と女の子です」

立ち上がってワインを取り出して苦戦しながら開けてる横顔を眺めて。
ここでさっさと『開けて』とか言ってボトルを手渡さない辺りが染谷といるのが楽な理由。
いやいや、キュートな女の子にやられたらそれだけでデレデレになる自信あるけどね。
今日の仕事は終わり、とラップトップをパタリと閉じて染谷の隣に移動して座る。

「…このワインあまり美味しくないわね」
「文句なら前の彼女に言って」
「そのまま引き留めもせずに別れるってあなたにしては珍しいわね」
「だってプレデターも知らない子と付き合ってもねー」
「基準おかしいわよ」
「あとマーティン・スコセッシが好きな子とも合わない」

ぐっ、とワインを飲み干してゴキッと首を鳴らすからさっきの台詞を思い出す。
酔いの勢いって言うより、酔って気がゆるんでるだけなんだよね、この人。

「そういうお友達作れば?」
「どういう?」

今から染谷の酔いに追いつくのもめんどいから、とりあえずカップに残ったコーヒーを一口飲んで。
顔に殆ど酔いが出ない友人の目元が少しだけ赤いのに気付く。

「セフレ的なの」
「そこで新しい恋人作れって言わない辺りがあなたよね」
「作りたいなら作ればいいじゃん」
「……一からまた恋愛するの?」
「その嫌そうな顔。だからセフレでいいじゃん。 ジャスティンとミラみたいに」
「そこでナタリーとアシュトンって言わない所もあなたらしいわよね」
「そういう細かいボケを拾ってくれるあんたはマジにいい友達」
「したくなる時ない?」
「あるよ。つか、おーるうえいず」
「私たちもなる?」
「なる?」
「抱きたい関係」
  
   
  
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