突発的大人パラレル

□Cherish/Cherish
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【Cherish/Cherish】




『大切な人』だから。







ベッドの中で言う台詞なんて当てになんないよね?
言う?
言われる?
どっちが正しいんだろ?
ヤッてる時に高まって言う台詞なんて当てにならない。
『好きだ』とか『愛してる』とかあんな時に言うもんじゃないんすよ、本来!
ってコトで、あたしはこうしてベッドの外でそれを口にする。

「愛してます、おねえたま!」
「あー、うん、ありがとう」

あれ?
反応薄っ!
薄くて丈夫なんてそんなのうちのハニーにはいらない。
むしろ、使わずにレッツゴー!
大きく息を吐き出して、口元は自分でもわかるくらいニヤけてる。
あぁー、好きだぁぁ!

「はいはい、わかったからこれ飲もうねー」
「んー」

渡されたコップを両手で持って、背中をさすられるからゆっくりと首を振る。
あー、ストップ、それ、すとっぷ。

「…っ…さ、紗枝……出ちゃうから……」
「順、早すぎ」
「早漏なんで……って、あたし、そんなに早くないし」

ノリで突っ込んで(どっちがボケかよくわかんないけど)、とりあえずコップの中の水を飲み干す。
いや、うん、だいじょうぶ、よってない、よってない。
笑みの形を作る唇から目を離せなくて。
欲求に逆らえなくてちゅーーーーっ!とその唇に吸いつく。
……すかさずお腹をワンプッシュされてトイレにダッシュするはめになったけど。
つか、どこ押したらリバースするかわかってらっしゃる。

「少しはまともになった?」
「…おかげさまでなりましたよ。あー、待ってて。チューするために歯みがいてくるから」
「あ、まだする気はあるんだ」
「もちろん、酔うとしたくなんない?」

しっかり、しっかり、歯を磨いて自分の息を確認。
大丈夫……だとは思う。

「お待たせしました!……って寝てるし!!」
「順、もう4時だから」
「時間なんて関係ない。今のあたしなら48秒で終われる自信ある!」
「やっぱり順、早い」
「傷付くから、それ傷付くから」

とう!と紗枝の隣にジャンプで寝ころんで、お腹を押されないように気をつけながら唇を重ねる。

「……唇、開いてよ」
「順、明日仕事」
「明日、紗枝は休みのはず」
「順は仕事でしょ?」
「問題無い」

もう一度唇を重ねるけど、唇を開いてくれないから全くなんてひどい恋人だ。
酔ってムラムラしたときに自由にヤラせてくれないなんて!
唇をとがらしてムッとしたまま見下ろして。
……だけど、苦情を口に出来ないのは下から見上げる顔を見つめてしまったから。

「…………好きだよ」

アホみたいに惚けた後、口にしたのはベッドの中じゃ言わない!とかって言い切ってた台詞。
いやいやいや、今はヤッてないから高まってない!
だって、このおねえたまが好きなのはヤッてる時も酔ってるも素面な時も一緒だから。
雨の匂いのする彼女が好きなのはもう遠い昔から変わりようのない事実だから。
ああ、苦しい、って左胸を押さえてみて。
その苦しみや痛みが甘美すぎて心臓が止まりそう。
あたし、今なら心臓止まっても何も悔やむことはないと思う。

「うん、ありがとう」
「…さっきと同じ反応だし」

がっかりしながら、それでも今度は向こうから来たキスで唇を開いてくれてたから調子に乗る。
雨の日に一緒に虹を探してた彼女は今じゃあたしにとっての虹。
虹の向こうにまた虹があるって……いいと思わない?
まあね、簡単に一言で言えば『おねえたまにベタ惚れです』ってそんだけ。

「……紗枝」
「んー?」

愛しそうに細められる眼や髪をくしゃくしゃにする手や甘いキスをくれる唇や腰に絡められる足や。
全てが愛おしい、って口にするのは胡散臭いから。
ただ『好き』ってだけじゃ伝えきれる気がしないから。
あたしがどんだけ紗枝を愛しているか。

「あたし、今ここで死んでもいいくらい幸せ」

ほんとにさ、苦しさや痛みが幸せだなんてあり得ない。
今、心臓止まったらきっと幸せだ、とかそんなのあり得ない。

「……うん」

小さく小さく笑って腕の中に引き寄せてくれるから。
ベッドの中での台詞は当てにならないから。
うん、こういう時は行動で示すのが一番。

「朝、寝坊しても知らないから」
「たまにはそれもいいよ」

大きく大きく彼女の香りを吸い込んで。
あーあ、言わないってさっきから宣言してんのに。
当てにならないんだってば。

「愛してるよ」

でも、ほら、口から出るのは仕方ない。
だって、ここにいるのはあたしだけの愛しい愛しい『大切な人』。

…あたしが思ってんのと同じこと、思ってくれてるよね?





















貴方となら『永遠』が欲しいんです




END
(12/06/15)

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