突発的大人パラレル

□ここにいて
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【ここにいて】





貴方の香りが染みついてとれないんです








「よし、染谷さん!まずはシャワーをどーぞ!」
「…………はい?」

ハーイ、そこのセクシーさんそんな顔で見ないでよ。
ひらひら、手を振ってついでにへらりと笑って玄関先で指さしたのはバスルーム。

「……何?呼び出しておいていきなりそれ?」
「最近、あたしがあんたを呼び出すって言ったら用事は一つに決まってんじゃん。ほらほら、ベッドで待ってるからシャワーへれっっごー!」

話してしまうと上手く話せそうになくて。
何を喋ったらいいのか、何まで喋っていいのかそれが分からなくて。
送ったメールは一言だけ。

―今から来れない?

それに応えてくれる染谷さん、マジ律儀。

「するだけなら、自分の部屋でシャワー浴びたからもういいわよ」

苛立ったように眉間に皺を寄せて。
あー、もう、あたしと居るとそんな顔ばっかしてるからそこに皺がよる!
…なんて、でも、確かにこの人も年はとったなー、とか。
目元と口元の皺はだけど笑い皺だからそれもキュートなんだけど。

「うん、知ってる。染谷、何時もいい匂いするもん」

首元に鼻を寄せて、軽く深呼吸。
何時もの染谷の香水の匂い。

「……だから、その香水の匂い落としてよ」

最低の提案をちょっとだけ試させて欲しい。
染みついた匂いにどう感じるのか。

「どういう意味?」
「簡単に言えば……」

まだシーツに同じ香りが残ってるけど。
………って、それ考えると本気であたしサイテーすぎる!

「紗枝と同じ香水付けて。んで、それから抱かせてよ」






匂いって中々に曲者だよね。
お腹が空いてたら、ますます空腹を強く感じるし。
恋しい、と思ってたらますます恋しくなってくる。
体じゃなくて心に染みついてて。
その香りだけで泣き出しそうになる。
 
 
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