A

□Locked out of Heaven
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【Locked out of Heaven】






愛や奇跡なんてあなたに出会うまで、全く信じてなかった








揺れる腰を捕まえて、熱い空気を感じるのはこの人が初めてでも無かったけど。
息があがるのを、声があがるのを、自分の膝の上、膝立ちになった人を見上げたまま吸い込んで。
吐き出す先は、彼女の唇の中、舌の上。
どこをどうすれば悦んでくれるのか、どうして欲しいのか。
少しずつ、だけど確実に、私の体にこの人は刻み込むから。
もう私はこの人以外とセックス出来ない体になってしまっているのかも知れない。
この人を悦ばせるだけの機械になれたら。
指も腕も舌も唇も疲れて動かなくなるまで、痺れて使えなくなるまで愛し続けて。
それでも、『足りない』と囁くから。
あなたを愛するだけの機械になれたら。

「……つかれた?」

機械なら燃料補給が必要。
揺らめく腰が止まって、キスを求める唇が離れた後に囁かれる言葉は機械には使わない声音で。
燃料補給ならその声だけで、ただ『欲しい』と求めてくれるあなたの言葉だけで痺れた指も舌もまた動き出す。
愛や奇跡は無い、と。傷つくようなことからただ逃げて。
この人にだって最初は期待なんてせず、ただ肌を重ねられればそれで良かったのに。
自分の快楽が得れればそれで満足だったのに。

「……まだ、出来ます」

長く、長く、長く、出来るだけ長く。
終わりが見えないくらいに、あなたは、長く長く、私を求めるから。


あなたと過ごす夜は一晩、そしてまた一晩、過ごす度に私を『大人』にしていく。
代償は何なのか、あなたと過ごす夜への対価は何なのか。
粘つく息を飲み込んで、深く深くこの人が好む深さへ指を押しこんで。
満足そうに笑う唇をあいた手でなぞって、噛み付くように口付ける。
頭の中で血管で心臓の奥で何かがはじけ続けて、この人とセックスする度に自分の寿命は短くなっているのかも知れない、なんて言う妄想。

それは、当然で、だって、この人のセックスは、何時でも私を楽園に連れて行く。

甘くあがる声がわざとなのも、私に与える燃料なのもわかっていて、それでも声があがればその度に自尊心は満たされる。

何時でも、何処でも、この人がいれば、楽園は近くて。

「…祈さん」

名前を呼んで噛み付いて、深く深く長く長くあなたの求める方法で愛し続けますから。

「……ここに、ずっと、いてもいいですか?」

ずっと、ずっと、あなたの側に。
あなたと一緒にいたいから、私はあなたを愛する機械になりたい。



苦しくて情けない哀願に返事は無く。
ただ強く掴まれる髪と引き寄せられる唇と。あなたとするセックスは私を楽園に連れて行ってくれる。



「…愛してます」



ただただ、楽園が近くなる度に私は天国から締め出される。











あなたといる限り、私は天国から締め出され続ける。

…そこには愛も奇跡も無いのかも知れない。



















天国なんて何処にも無い




END
(13/07/12)

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