A

□プレイ
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【プレイ】





愛は人生に必要なだけでいい。
欲張って自滅して、本当に大事なものを失ってから涙するくらいなら、必要なだけ抱きしめて。
それを大事に大事に育てていくのが正しい人生で人の道なのかも。





………なーんてね。








必要な分しか与えてくれない程、うちの恋人はせこい人じゃ無い。
選んだ相手が悪いなんて思わせないように私の恋人は何時も頑張ってくれるから。
それはもう本当に、私が言うのもなんだけど、それはそれは頑張ってくれるから。

「…き、休憩…はさんでも……いいですか?」
「どうぞー」

ばったり、とベッドにうつ伏せてるから裸の背中に飛び乗って。
苦しそうに呻くから『可愛そうに』と唇をその背中に押し付ければなぜか背中をねじって逃られる。
追いかけて追いかけて、その耳に舌を入れればなぜか顔を押し返されるし。

「…祈さん、休憩の意味分かってます?」
「もちろんよ」

深いため息を飲み込んであげようとすればまた顔を逸らして。
まだ、チャージが終わってないです、なんて謎の言葉。

「…前から思ってた事、言ってもいいですか?」
「何?」

それでも、私の顔を押し返した手で頬を撫でてくれながら唐突に尋ねてくるから頷いて。
その声が掠れていたから枕元の水を口に含んで、重なった唇の隙間から口移してあげる。
喉を鳴らして飲み込んで、最後に私の唇を一舐めるから舐め返して。
言いかけた言葉の続きを瞳だけで催促する。

「…祈さんて……いえ、やっぱり何でも無いです」
「なーに?気になる」

与えられて与えられてそれでも足りなくて。
まだ、駄目、もっと、と繰り返せば応えてくれるのは……無道さんが若いからか。
それとも、律儀なだけなのか、むしろ……絶倫?
(どっちがですか?なんて言われそうだけど)

「…言って」

瞳を見つめて小さく囁く声で促せば大抵の事は思い通りになるから。
仰向けになった後に自分の顔を片手で覆って、その隙間から私の顔を覗き見ると無道さんは深いため息を一つ。

「いや、祈さんてセックス依存症じゃないのか、ってたまに思うんで」
「………………」
「あー、すいません。失礼な事、言いました、忘れてください」

慌てて手をパタパタ振って、キスで誤魔化そうとするくらいの知恵はついてきたけど、こっちはそれをかわすのなんて簡単で。

「それ……今更、気付いたの?」
「はぁっ?!」

なるほど、お互いに同じような事を考えてたのね…、なんてそこに浮かれて言われた意味は頭の中に浸透せずに。
ああ、それって失礼な言葉よね、なんて他人事みたいに感じて。

「今更、ってじゃあ最初からそうだったんですか?」
「依存症って言うか切れると震えが来るわよね」
「危ない人じゃないですか、それ」
「だーかーら」

もたれ掛かっていた体から一度離れて、今度は腰の上に乗れば呆れたような顔で見上げてくるから。
腰を押し付けてもどっちにも快感なんて無いはずなのに、それでも顰められた顔は確かにそういう顔で。

「休憩、まだ終わってません」
「してていいわよ、無道さんは休憩」
「そういう訳にもいかないでしょう」
「無道さんがそうやって処理してくれるから今のところ震えは来てないわ」

挑発の言葉で燃えさせて、ただ楽しむために挑発してるのに、それには乗らずに、むしろ、諭すみたいな顔でまた首にキスを落とすから。

「お付き合いしますよ、処理に」
「…言い方が可愛くない」
「先に言ったのは貴方です」
「無道さんがもう無理なら他の人使うからいいわよ」
「んー…」

今度こそ嫌そうに顔を顰めて、だけど瞳には『困ったな』ってそれだけで。
まるで子供の我侭を受け入れてる父親みたいに(なんでか母親じゃなかった)。

「もしくは、そういうグッズを買って一人で処理するか」
「うぅん…」

なぜかさっきよりも嫌そうな顔の後、そしてさっきと違うのは大きく首を横に振ったこと。

「…だって、無道さん、私の見るの嫌いじゃないでしょう?」
「まあ、好きですけど。一人でさせるなら付き合いますよ」
「他の人使うのは?」

まるで子供みたいに。
どっちが子供か分からないみたいに、困らせるための問いを投げても、まるで無道さんの方が年上みたいに笑って。

「使いたいならどうぞ」

余裕なのは、無道さんが大人になったからか。
それとも私が無道さんが思っていたほど『大人』じゃない、と気付いたからか。

「私だけで足りなければ、……ですけど」

首筋に押しつけられた唇の感触に強く眼を瞑って。
その耳にキスをして舌先でくすぐれば、あっさりとシーツに背中を押し付けられるから『休憩』はもうおしまいみたい。

「意外に…」

道具も他の人間もいらないくらい、ちゃんと私を満足させてくれるから。
無道さん以外とする理由も、したいと思う気持ちも全く無いから。

「…無道さんの方が依存症なのかも」

よくこんなに出来る、と冷静に自分が言うのもおかしいけれど。
客観的に見ればそれはそれは頑張ってるから。

「私が依存してるのは……」

また呆れたように笑って。
そんな事、知ってるでしょう?って傾げられた首に私だって笑い返して。

「…知ってるけど、言って」

瞳を見つめながら囁くように言えば大抵の事は思い通りになるから。


「…依存してるのは貴方にです」







必要なだけでいいなら、それだけで。
だけど、必要な分を全部与えてくれるから。




「…満足させて」





今、私が抱きしめるのは貴方だけ。


































「…そういう道具って使って気持ちよくなるんですか?」
「試してみる?」
「いや、結構です」
「無道さん、その手の道具嫌がるから」
「それは、まあ。…だけど、祈さんが好きなら考えます」
「ううん、今は無道さんがいいから」
「…頑張ります」
「無道さんの指がいいところ探してくれる方が私は好き。ほら、無道さん指の長さが足りない時も…」
「いや、あの、具体的に言わなくていいんで、とりあえず実践で確認しませんか?」
「無道さん、元気ー」
「……正直、精力剤の類に手を出そうかと考えるくらいには元気では無いんですけど」
「買ってあげましょうか?」
「結構です」
「あ、じゃあ、もっといい物買ってあげる。無道さんがその気になるような……」
「結構です!」






END
(14/05/26)

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