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□Let Me Love You
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【Let Me Love You】
玄関のドアがノックされたのはもう夕方近い時間。
キッチンに立ってぼさぼさの頭を掻きながら珈琲にするかビールにするか悩んでいた時だった。
まだクラクラする頭のままドアを開けば…。
「……何ですか?このコンビ」
「ちぃーっス」
「…お邪魔します」
デコボコした上に、何だか不思議な二人組が立っていた。
日曜日の夕方。
お隣さんは珍しくどっちも休みだったらしく、そして不定休なうちの姉は今はマグロ漁船に乗る時期じゃないらしい。
(いきなり消えたまま数ヶ月でも帰ってこない姉の所在を幼かった私に聞かれて槙さんは困った事だろう。咄嗟に『と、斗南さんはマグロ漁船で働いてるのよっ!』と答えるくらいには)
(トロを食べる度に思い出して何時も笑ってしまう)
「…どうしたんですか?」
夕歩には珈琲もビールも却下だから、棚から祈さんの紅茶を失敬して三人分いれて。
ヨレヨレのTシャツの上にパーカーを羽織って小さな声で問いかける。
「…んで小声なンだよ?」
「やっと寝かしつけたんですから、起こさないでください」
「この時間に寝てンの?あのオンナ」
「やっと、寝たんです」
一日家にこもって、ダラダラ過ごす休日だって悪くない。
パジャマのまま、ぼさぼさの頭で。
……家どころか寝室から出してもらえなくて体力ゼロになっていたのまで、この二人に話す必要は無いから。
(覚えたての時でもここまでヤらなかった。むしろ、あの人の体力には感心を通り越して畏怖の念すら抱く)
(……体力ゼロになっても出来るのは、それは、まあ、あの人の魅力だろうけど)
「綾那は今日一日何してたの?」
「……寝てました」
…ええ、8時も10時も13時も16時もしてた事は概ね同じなんですけどね。
夕歩の質問と私の答えに柊さんが笑うのを眼の端で確認して、それでも何も言わなかったのは不思議すぎるこのデコボココンビの理由を確認したかったから。
「で、二人は何で一緒にいるんですか?」
「ンなのデートに決まってんしょ?」
「デートならちゃんと誘ってください」
「…ちっこいおネーちゃん、シャレ通じねーな」
「…………見つめあって和んで無いで説明してくださいよ」