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□Why not?
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【Why not?】




友達の恋人なんて気持ちの良いものじゃない。
その友達に恋心を持っているなんて事ではなくても、自分達の間に誰かが自分よりも大きな顔をして大きな存在みたいに入ってこられるのは好きじゃない。

……親友の恋人が刃友だった場合でもそれは変らない。









刃友とだけ呼ぶには深すぎる仲の人が折角出来た親友を奪っていくのが気に食わないのは決して私の我侭では無いと思う。
もちろん、私には綾那も恵ちゃんもいる。
だけど、その誰もが大事な人で(順と付き合う綾那や恵ちゃんを想像してなんだか複雑な気分になった)誰を奪われても気に食わなかったと思う。
(…それにこの二人はただの『親友』でも無い)
最近すっかり素直じゃなくなった親友は(『失礼ね』ってまた突っ張ったみたいに言いそう)それでも私の前では素直に笑ってくれるから。

「…………えーと、夕歩さん」

私の足元に正座のお庭番(この呼び方は嫌いだけど今回はあえて呼ぶ)のつむじを見下ろして。
上目使いに見上げる瞳を睨み返す。

「あたし、一体なんの悪いことしたかなー、とか心当たりがありすぎてわかんないって言うか。姫に土下座させられるのは嫌じゃないけど、ちょっとドキドキかなー、とか」
「…順」
「いえす、姫」
「ゆかりを返せ」

そう順に物言いをつけても問題は無いと思うの。





「『返せ』って、いや、待って。染谷って夕歩の所有物じゃ…」
「言い方を変える、ゆかりとの時間を返せ」
「姫とマイハニーの時間を奪ったりしてませんよ。むしろ、二人が並んでるとご飯が二度美味しいですよ、あたしは」
「順がいるとゆかりが素直じゃないの」
「うん、あたしだけの前でもあんま素直じゃない」
「私と二人きりの時はゆかり、素直なの」
「今度それ隠し撮りしていい?」
「………………………」

困ったぞ、って顔に丸出しのお庭番を睨みつけて。
私だって素直なゆかりと喋りたいし、ゆっくりと一緒の時間を過ごしたい。

「それならさ……」

何より気に食わないのは、人の隣にずっといたお庭番があっさりと人の親友を奪ったことじゃなくて。
お庭番を親友に盗られたなんて思ってもないけど、だけど、気に食わないのは……。

「3人でいいじゃん」
「順はいらない」
「……そろそろ慰めてあげないとあなたのお庭番泣きそうだって、お気づきでしょうか姫」
「泣いてもいいけど、ゆかりにすがりには行かないでよ」
「あたしの幸せまで奪うおつもりですか!むしろ、行っても呆れた顔されて『はいはい』とか受け流されるのがオチだよ、あたし」
「なら、いいでしょ」
「良くないよ!全く良くない!」
「絶対、私の方がゆかりに可愛い顔させてると思う」
「なんだか卑猥!その発言卑猥です、姫!」
「変な想像しないで」
「あんた、まさか綾那だけじゃなくて染谷にまで!……………って、ごめんなさい」
「……その件は無かったことにして」
「………はい」
「……………」
「……………」
「と、とにかく、あたしと染谷は恋人なんだから一緒にいて問題なし!」
「問題あり、ゆかりと順なんておかしいよ」
「姫、ひどっ!」
「だいたい、何で順にゆかりなの?」


気に食わないのは……

「何で?」



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