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□Riff-Off
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【Thong song】(順ゆか)



「んーっ…」
「何?どうしたの、順。ゆかりの後ろ姿眺めて」
「いや、夕歩さん。思いませんか?うちのハニーのお尻ってサイコー!って」
「…心配して聞いた私が馬鹿だったよ」



呆れる姫をよそに遠くでトレーニング中のマイハニーこと染谷さんはあたしのことは視界には入ってはいるだろうけど、こっちを向いてにっこりと笑ってくれることも手を振ってくれることも無しで。
えぇい!冷たい彼女だよ!と腹を立てつつ、それならと染谷のお尻眺めてるあたしだって、まあ、我ながら本能に忠実。

「ジャージって意外にお尻のライン良く見えるよね」
「今後、順が私の後ろに立ったら迷わず蹴り飛ばすよ」
「前屈み注意ね、夕歩」
「それより何より順に注意だよ」

生だって見たことあんだろう、ってそんな無粋な突っ込みは無しにして。
細身の割には出るとこちゃんと出てるマイハニー。
(あ、いや、うちのお姫様が出てないとかは置いておいて)
(…口にして無いのに膝の後ろ蹴られたのは何故なのか)
もちろん、お尻だけじゃなくてあの魅惑的な渓谷だって中々のモノで。

「…ゆかりー、ここに痴漢がいるよー」
「その染谷に聞こえるか聞こえないかの声で通報するの止めませんか、姫」
「見られてるのに気付いててゆかりがそれはそれで、って言ってるなら通報しない方がいいのかも、と思って」
「うちの彼女を痴女みたいに言うの止めて」
「ああ、これが『視姦』なんだね」
「誰っ!?夕歩にそんな言葉を教えたの!!!」
「祈さん」
「おねえたま?!」
「冗談だよ」
「あたしも教わりたいっ!」

って、それはまあ置いておいて。
無防備にまた屈んだりしてくれてる彼女を美味しく眺める反面、人には見せたくない、ってそんなのあたしのわがままなんだけど。

「ほんとだ。ゆかり、お尻の形が綺麗」
「………夕歩さん、すいませんが『視姦』とか言った後に人の彼女のお尻にそう言うの止めてもらえます?」
「あ、でも、あれってやっぱりそうだから?」
「何が?」
「下着の線が出てないのってTバックはいてるから?」




すいません、その情報、何度もあの人の下着を脱がしてる恋人のあたしが初耳なんですが。




「染谷ー!あたしもTバック見たいーっ!」
「はいてないわよ!いきなり、何!?」












「あれ?ふんどしだっけ?」
「…夕歩、あの人そういう事でからかうの止めて。本気にして心底鬱陶しいから」















【Shake Your Booty】(ナン槙)




硬くなるモンが付いてなく良かった、と思うのはこういう時。





鍛えているはずの体はなぜかあたしのモンよりもそこもかしこも柔らかくて。
そういう雰囲気のそういうコトをおっ始めまスカ!って時に人のまっ裸見てウジウジと言われるのには慣れたけど。
(「凄い、綺麗ね…!」ってテメエは初めて見たんでもねーだろうが)
(「…私、筋肉が付きにくいの」なんてまあ確かに体の一部はとにかく柔らかいけどな、この女)

「ごめんなさい、少し待ってね、ここの確か…」

何か言ってたのは聞いた。
何か見せたいモンがあるとか何とか言ってたのはおぼろげに聞いた。
今も何時もの如く喋りすぎる程に何かイロイロ言ってんのは分かるけど、全く耳に入ってこないのは…。

「…上条さんヨ」

這いつくばってベッドの下を探ってる姿を後ろから見せられるコッチの身にもなれよ、テメエは。

「なにー?待って、たぶんあったと思うの」


ンなもん、心底どうでもいい。




発情中の猫みたいに高く尻を突き出して体を動かす度に揺れるソレを眼の前にで見せつけられて思ったのは硬くなるモンが自分には無くて良かった、なんてサイテーな考え。
…いっそ硬いモンをその尻に押し付けてやればこの女だって自分の状況を把握するんじゃないか。
いや…、この女の事だから「斗南さん、何かお尻に当たってるんだけど?」なんて素で聞きそうだ。

「おーい、上条ー」
「はーい?」

『はーい?』じゃネーよ、このボケ女。






…って、だから、尻を振ンな!














それでも尻には噛みつかずに出てきた女が慌てないように、きちんとキスから始めたあたしは偉い。



















【Low】(ゆか恵)



珍しく彼女がジーンズをはいている。




「珍しいね」

足元のファー付きのブーツを見ながら、それでも未だにその瞳をまっすぐに見つめる事が出来なくて。

「何が?」
「染谷さんがジーンズって」

ファー付きのブーツから視線を上げて、それをもう少し上げれば口元を曲げる姿が眼に入って。
何か悪いこと言った?と不思議に思う前に足を進めてて先に歩いて行ってしまうからその後を数歩後から追いかける。

「染谷さん?」
「おかしかった?」
「ううん、全然。ただ珍しいな、と思って」

不思議な行動をする天地の猛獣使い……じゃなくて、恋人にも慣れたつもりが全くそうでも無くて。
手綱の取り方だけならきっと夕歩の方が断然上手い。
私の先を歩くからジーンズに包まれた彼女のお尻に眼が行ってしまって、慌てて逸らして。
だけど、もう一度戻せばローライズのジーンズとシャツの隙間から背中がチラリと見えていて。

「っ!」

慌てることは無いと、自分に言い聞かせて。
(だって久我さんだってよくこういうのはいてる。背中だってお尻の上の方だって見えてても全く気にならないのに)
これじゃあ、まるで変態みたいだ、と自己嫌悪に陥る前に染谷さんがこっちを振り返るから慌てて視線をその表情に向ける。

「あのね…」
「はい」
「ジーンズ」
「はい」

少しだけ眉根を寄せたその顔は困惑している時にするものだ、って今ではなんとなく把握出来て。
(夕歩に教えてもらった)

「…増田さんがよくはいてるからお揃いにしたかったの」
「…………」


猛獣使いの恋人はそう言って、今度はこっちを困惑させる。




何も言えないとまた振り返って歩いて行こうとしてしまうから慌てて追いかけて。
(ああ、けど、このジーンズちょっと浅すぎじゃないかな?!)
嬉しい反面、綺麗な背中もお尻のラインも他人には見せたくない、なんて意外に私は独占欲が強いのかも知れない。
(うん、浅すぎる。大事な恋人のお尻を守るにはこのジーンズは短すぎるよ!!)







「似合う、と思うよ」
「…本当に?」
「うん、とっても似合う」
「良かった、夕歩に選んでもらったのよ、これ。何だかウエストの辺りが落ち着かないからと思ったけど『ゆかりに似合うよ』って」
「……ああ」


















【Bootylicious】 (綾紗枝)




『Bootylicious』
(booty+delicious)

【意味】
[形] 性的に魅力的な







…あれだな、最高に美味そうな尻、とかそういう事か。

「無道さん、どうー?」

今、眼の前にある、コレが所謂『Bootylicious』。



― 新しいパンツを買ったの


なんて言われた瞬間に違う『パンツ』を思い浮かべた私は正直頭を打ち付けて自殺したいレベルで。
まあ、わざわざ『ジーンズ』と言わずに『パンツ』と言った辺り、この人のことだから絶対にわざとで。

「ああ、はい、似合います、似合います」
「心がこもって無いー」
「あなたは何着ても似合いますよ」
「それとこれとは別よ、恋人の気に入る格好したいじゃない」

もう、それならいっそ修道服でも着てくれ。
お願いだから体のラインが出ない服を着て欲しいんだよ、お預けの身としては。
(頭の中で尼さんたちが一瞬歌ったのは順の影響)
(ウーピーって何の呪文だ?と聞いて順に呆れた顔をされた)

「…ああ、でも、それサイズ合ってなく無いですか?」

お尻のラインをもう一度だけ盗み見て、だけどウエストの辺りは妙に緩いと今さらに気付いたのはチラチラ見える臍を盗み見ていたからで。
(だから、私は変態かっ!)

「うん、これ、そういうジーンズだから」
「はあ」
「ボーイフレンドデニム」
「はあ」
「彼氏に借りたジーンズはいてるみたいで可愛いでしょう?」
「…はあ」

……………………ん?

「祈さん、ボーイフレンドいるんですか?」
「ううん、ガールフレンドならいるけど」
「軽いですね、『ガールフレンド』って言ってしまうと」

そういう作りの服だとまあ分かるのは分かる。
(私のを貸せばきっと足が短いうえにウエストはゆるいのに尻は小さい気がする)
そう言われば少し緩めのそれは確かに可愛く…………って、なんだか不快なのは何でなのか。

「祈さん」
「はい、なーに?」
「……それ脱ぎませか?」

瞳と唇が笑うのは何時ものポーズじゃなくて、楽しい時の『笑み』だとくらいは理解できるようになったから。

「無道さんのえっちー」
「はいはいはい」

『脱げ』と言わせるために着てたんだろう、なんて私の思い過ごしかも知れないけど…。

「サイズ合わないでしょうけど……私の貸しますから」







どうせならちゃんと私のをはいて欲しい。












「眼、開けていいわよ、無道さん」
「嫌ですよ、絶対に下着姿とかでしょう、祈さん」
「お互いに見せるとかならいいんじゃない?」
「良く無いですよ!!」
「私も無道さんのお尻見たいー」
「……………」



















【Baby Got Back】(玲夕歩)






平べったい尻が好きなわけでは無い。





「じゃあ、大きいお尻が好き?」
「………お前の質問は未だに謎で未だに怖えんだけど」

どこかもかしこも平べったい恋人の体に物言い付けたい所なんて一つも無くて。
彼女の物、とそう思えば全てが愛しい。
(「お前の顔で体系で巨乳だったら気持ち悪い」と言ってブチ切れられた事はあるけど)

「ゆかりがね」
「ん?」

また始まった、って友人との話は何時もあたしに対する主張に変わるから大人しく耳を傾けて。

「ジーンズ選ぶの付き合って、って言うからローライズ勧めておいたの」
「うん」
「試着したらセクシーすぎて思わず涙ぐむくらい笑っちゃった」
「お前はいつか友達無くすぞ」
「大丈夫、本人の前では必死に笑うの我慢したから」
「気の毒すぎるぞ、染谷…」

こいつのからかいの対象になっている友人に同情して。
外見の割にはひねくれた愛情表現をする事くらい、あたしよりもあの友人の方が良く分かっているだろうし。

「…けどね、思ったの。玲もこういうのが好きなのかも、って」
「…………染谷が、かよ?」
「そんな嫌そうに言わないでよ、人の友達に」

こつん、と肩を叩く拳はあえてそのまま受け止めて。
その友達をからかって笑ってたお前はいいのかよ、なんて。

「じゃなくて、ああいう色っぽい体がいいのかなー、って」
「…………染谷が、か?」
「また嫌そうに言ってるけど。ゆかりじゃなくても祈さんだって会長さんだって玲の周りにはスタイルの良い人が多いし」

やっぱみのりと紅愛は含まないのか、なんてこっそりと自分の友人に失礼な事を考えて。
不躾な視線はまあ確認のためだから許してもらえるだろう、と夕歩を見つめれば情けない事に出るのはゆるみきった笑みだけで。


「あのな」


手を握ってその甲に軽く軽く唇を押し付けて上目使いに顔色を窺って。
でかい尻にもナイスバディにも興味は無い。
むしろ、お前以外は眼に入って無い。
…なんて、口にすればそれはそれで嘘くさく響きそうだから。





「大事なのは愛情表現と騎士道精神だと思ってる」






美味しい食事に連れて行って、そして帰り道にその手の甲にキスをしよう。












「…玲の騎士道精神は『ヘタレ』ってルビ振りたくなる」
「襲うぞ、お前は」
「どうぞ」
「………やっぱルビ振っていいぞ」







END
(15/11/09)

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