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□見返りを求めないプレゼント
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【見返りを求めないプレゼント】



『愛』は見返りを求めない……なんて、そんなの嘘だと思わない?




出かけた先で見つけたそれを即決で買ってしまって。
だけど帰り道、手の中にあるそれを見つめてはニヤけてた。
早く早く!渡した時の彼女の顔が早く見たい!って。

「染谷ー!」

部屋に居なかったから探して探して。
やっと見つけた彼女の元に小走り駆け寄る。

「順?」

首をかしげるその前に立って、少しだけ乱れた息を整える。

「はい」

差し出したのは小さいきゅーとなブーケ。
見つけて瞬間、なぜか染谷にぴったりだ!なんて即決で買ってしまった。

「……なに?」
「あれ?ゆかり誕生日だっけ?」

……あ、連れが居た。
染谷の隣で首をかしげてるのはたぶんクラスメートの人。
見かけたことある顔だし。

「こんちわ」

手は染谷に差し出したまま、頭をさげてご挨拶。
うんうん、挨拶ってのは大事ですからね。

「……誕生日じゃないわよ」
「花を渡すのは誕生日だけってわけじゃないでしょ?」

軽く答えて………あ……れ?
あたしの腕は差し出したまま、ブーケを握ったまま。
受けとってくれないどころか……なんか凄い顰めっ面なのは……なぜ?

「いや、花屋さんの店先で見つけてさ。可愛いしあんたに似合うなー、と思って……」

言いながら語尾が小さくなっていったのは……なんか、ちょっとへこんできたから。
あれ?なんか想像してた反応と違うんですけど?

「……い、いらなかった?」
「誰もそうは言ってないでしょ?」

そう言いながらもブーケはまだあたしの手の中に。
あー……うん、受けとってもらえない感じだね。

「あ、じゃあ、いいや、うん。これ夕歩にあげることにする」

顰めっ面に見つめられるのが辛くなって、早口にまくし立てて回れ右。

「お邪魔しましたー!」

顔だけで振り返って、お連れの方にご挨拶。
また早足に駆けだして、後ろの方で名前を呼ばれた気もするけど……うん、気のせいだよね。






「はい、あげる」
「うわー、綺麗。ありがとう」

今回は差し出したブーケはすんなりと相手の手の中に。
嬉しそうに花を見つめて笑ってくれるから、そうそうあたしはこんな反応が欲しかったんだよ!てね。

「どうしたの?これ」

うんうん、姫さまには花がよく似合う。
……染谷にも似合うけど。

「…受けとってもらえなかった」

ただ説明しただけのはずが……なんか自分でも不機嫌に響いて。
悔しい……ってか、悲しい?
んー、今のこの気持ちってどれが当てはまるかな?

「受けとってもらえなかったって……ゆかり?」

部屋の中に入れてもらって、その真ん中にどっかりとあぐらをかく。
首をかしげる夕歩を見上げて、その腕の中のブーケを見上げて大きなため息がついつい出る。

「どうかしたの?」
「どうかって言うか……」

さっきの出来事を簡単に説明して(て、言うかブーケ渡しても受けとってもらえなかったってだけだけど)なぜか今度は夕歩がさっきの染谷みたいな顔をするから首をかしげる。

「夕歩?」
「…ばか」

………何故、馬鹿呼ばわり?
今度は夕歩が大きなため息。
そして、押し返されるブーケ。

「……あ、あれ?」
「もう一度渡しておいで」
「いや、だってさ、さっき……」
「さっきはさっき。もう一度、今度はちゃんと二人きりの時に渡してあげて」
「でも……」
「ほら、早く」

さくさくて立たされて、さくさくと部屋を押し出される。
…………な、なんなんすか?
仕方なくとぼとぼとたらい回しのブーケを片手にまた歩き出す。
ドアを閉められる時に聞こえた『なんで、そう変な所鈍いのかな……』って呟きの意味は考えないことにした。
  
  
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