【3】

□ゆか夕は『恋に落ちる』順ゆかは『心奪われる』、この2人はなんだろう?
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【ゆか夕は『恋に落ちる』順ゆかは『心奪われる』、この2人はなんだろう?】









Q:『恋に落ちる』と『心奪われる』の違いって何ですか?





「何だと思う?」
「……ぁっ……はぁ?」

漏れた出た声がそのまま険悪を通り越して、ガラの悪い声に変わる。
人の中に指を突っ込んだまま、顎に手を当てて一体何を考えるってんだ?
下腹部からのジンジンする感触と渇く喉。

「あ、ごめん」
「ふぅっ……」

我に返って不意打ちに中に入った指を曲げるから。
吐き出した息と同時に背がのけぞると追いかけるように首筋に唇を押し付けてくる。
なぞると言うより舐めるがぴったりの舌の動きは好き勝手に動いているようで的確で。
くすぐったいを通り過ぎれば嫌悪か快感しかない。
幸なのか不幸なのか後者であるのは間違いないけど。

「あたし達」
「…っぁ……あ……」

ぽつり、と言った言葉は聞こえたけれど。
指先が動き続けるから意識は継続的に響く濡れた水音にしか行かない。
その癖、見上げればどこか惚けた顔で。
これじゃ、一人で盛り上がってるだけのただの馬鹿だ、と手首を掴めばまた『我に返った』って顔。

「ん、もっと奥がいい?」
「んんっ…!」

こいつの中指は妙に長いから。
ぐっ、と押し込まれる瞬間の奥を引っかかれる感触にまた変な息が漏れる。
掴んだ手首がぬるりと滑って、自分のそこがどうなっているかとことん思い知る。
限界は近いのに、どこか冷静に攻められると終われない。
真面目にやれ、と。
無理矢理、頭を引き寄せて口内を舌で荒らせば律儀に応える癖に。
…………また上の空。

「……っ!あんたはやる気があんのかないのか!」

ゴン、と。
蹴り上げた膝は見事に順の顎に。

「………おぉぉぉぉう……」

そのまま肩を足の裏で蹴って順の体を押し返す。

「いったぁ……。ちょっと!何すんの?」
「それはこっちの台詞だ。やる気が無いなら無いで最初から押し倒してくんな!」
「ひどっ!のりのりだった癖に!一回はイッた癖にその言いよう」
「さっきのはイッてない!」
「嘘だ、中しまったもん!」

とりあえずもう一度順の顎に膝蹴りをくらわして。
服を着るにはいろいろとベトベトすぎる。
しかし、自分で後始末するのも癪。

「あたしはただちょっと考えごとしてただけなのに…」
「ああ、そうか」
「いや、真面目にヤッてたよ」
「ああ、そうか」
「……下、拭きましょうか?もしくは舐めましょうか?」
「…………………」
「はい、始末させていただきます」

ティッシュで拭きながら、『うわ、ぬるぬるじゃん』と言った瞬間に身をひいたのは正解。
蹴りそびれた膝が宙に浮く。

「あたしはたぶん落ちてるし奪われてると思うんだよね。正解は両方でいいのかな?」
「私は落ちてもないし奪われてもない」
「違いってさ『2人で落ちる』か『1人でもがくか』だと思わない?」
「どうでもいい」

ベッドの下に丸まったジャージを拾って(下着が無いと思ったら中に丸まってた。無精な脱がせ方しやがって)着てそれでも隣でまだブチブチ言ってるから蹴り出そうと決心する。

「真面目に考えてよ。今後、あんたがイケるかイケないかの死活問題だよ」
「イかす気がないなら最初からすんな」
「あたしはあんたの顔見てるだけでわりとイケてるから問題ない」
「そういう問題じゃないんだよ」
「ほら、死活問題」

隣にゴロン、と横たわって。
名残惜しそうに指を舐めてるから今度はその頭をはたく。
誰の所為で途中で止めたと思ってんだ。

「んじゃ、両方だ両方。ほら、これで終わり」
「それでもいいけどさ……」
「んっ!」

不意打ちで耳を舐められてせっかくの冷めた熱がまた上がる。

「…イキたいならにイカせますよ」

なのに、囁く声がふて腐れてて、また一気に熱が冷める。
義務でやれとは誰も言ってない。
一体、こいつは何のくだらない事をグジグシ言ってんだ?
墜落すんのも強奪されるのも、どっちでもいいだろうが。
『2人で落ちる』か『1人でもがくか』なら私たちはどっちでも無い。

「2人でもがくのは何だ?」
「は?」
「私達の正解」
「………なんだろね?」
「わからないなら聞くな」

ぐい、と襟首を掴んで引き寄せて。
また惚けた顔をしてると思ったら急に笑うから。

「……そっか、なるほど」

私の返事は気に入ったらしい。

「で?」

ニヤニヤと近付いてきた顔はそれでも目だけが笑ってないから。
こいつがそういう気分になってる時の証拠。

「イかせましょーか?」

……いいから、さっさとキスしろ。
















Q:『恋に落ちる』と『心奪われる』の違いって何ですか?


A:…そんなもん考えたってわかるか





END
(12/04/06)

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