【3】

□Singing In The Rain/Umbrella
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【Singing In The Rain/Umbrella】







It's beautiful, isn't it?
Just like I knew it would be.
He really must be a wonderful Wizard to live in a City like that!








…雨には物語性がある。
あるいはそこはかとないセクシーさが。

今から話すのはそんな雨みたいなおねえたまのこと。




おーばーざれいんぼうよろしく夢の国を目指して。
虹を越えれば翠の街にたどり着く?
翠の街にいる魔法使いは偉大だってさ。

Come with me.
To the Emerald City!

ドロシーってどう見ても悪者だよね?あれ。
死んだ人の靴盗むは人の家に不法侵入するわ。
水かけたくらいで魔女が死ぬか、って。
……ん、話がずれた。
あたしの悪い癖。
なんかさ、思いついたら口にしないと気がすまないって言うか。
口は災いのもと?
沈黙が美学だなんてナンセンス。
言葉は並べてこその言葉であり………あ、はい、おねえたまの話でしたね。
あたしとおねえたまには共通点が一つ。
『虹』が出るのを何時までも何時までも待ち続けてる、ってとこ。
うん、結構詩的な表現になりました。
って言ってもあたしの『虹』とおねえたまの『虹』は別物なんだけどね。
いや、別人と言うべきか?
うちのお姫さまには似合うけどさ、あの人にはちょっと似合わない気もしない?




雨上がりの虹を見つけて。
『Oh…』なんて上機嫌に空を見上げながら歩いてたら同じような体勢の人に遭遇。
今度の『Oh』はちょっとだけ悦び&艶入りで。

「綺麗ですね」

声を掛けてみて、『久我順』と言う存在を認識し始めてくれたことをその顔を見て認識。
通りすがりの下級生では無くなったのは何時くらいかな?
わかんない、あたしの思いこみで今でもおねえたまにとってはあたしはただの『通りすがりの下級生』なのかも。

「おねえたまの方が綺麗ですけど」
「相変わらず口が上手ね」

はい、まあ、別の意味でも上手ですけどね。
隣に立ってみて同じように見上げた空には雨上がりの虹。

「雷、さっきまで凄かったのに」
「知ってます?」
「なにが?」
「雷がなるのは雨の時だけって」

空を見上げるのを止めて、やっとこっちを向いてくれるから。
はーい、どうも、久我順です。
小さく手を振ってみる。
綺麗、とか、美人、とか。
言い表す表現がありふれすぎてて面白くない。

「おねえたまには雨の方が似合います」
「また、濡れさせたい?」
「あの時の後悔は濡れ濡れのおねえたまをじっくり鑑賞出来なかったことです」

うちのお姫さま最強。
だってさ、あたしの切り札であたしの魔法だから。
とっておきの究極魔法的な感じ?
呪文でも唱えないと。
Eleka nahmen nahmen 
Ah tum ah tum eleka nahmen!
よし、間違えずに言えた!

「嘘つきね」
「どれがでしょう?」
「全部」

嘘ではないんだけどな。
けど、真実かと問われるとそれも違う気がして。
そんなのさ、どれが嘘でどれが本当かなんてその人の主観でいいんじゃない?

「ひどいなー」

とりあえずの傷付いたふりは、あたしよりもランク一つ上の嘘つきには通じない。
本当のポーカーフェイスって言うのはこういうことを言うんだよね。

「青天の霹靂」
「それって喩えじゃないんですか?」
「晴れた日に宗教書を売ってた人が雷にうたれたって話知らない?」
「へー、で、その人は?」
「さあ?でも亡くなったんならもう誰もその宗教書は読まないわよね」

嘘なのか本当なのか。
にこやかに吐かれる皮肉が結構好きなのはそれに共感出来るから。
ああ、いいな、その笑顔、サイコー。

「おねえたまもきっとドロシーは最低の小娘だ、って言うタイプですよね」
「悪い魔女を倒した勇気ある女の子をけなすなんて久我さん趣味が悪い」
「うん、絶対思ってないでしょ?」

空を見上げたらもう虹は消えてた。
うん、そんなもんだよね。
そうやって人の気持ちも知らずに消えやがってくれるんだよね、君たちは。

「…祈さん」
「なに?」
「別の意味で濡れてみるって言うのはどうでしょう?」
「いいわよ」

答えはあっさりしすぎてて。
こっちが呆気にとられるくらい。
最初からそこは全く変わんないよね。
あれですか?あたし以外とでもこういう事してるとか?
会長でも星河さんでも斗南さんでも、たぶん相手には事欠かないだろうね。
あたしでもいいくらい、ってよりもあの人じゃなければ誰でもいい?
うん、そこら辺の意見はがっちりとあってしまっているから。
『通りすがりの下級生』の認識でもあたしは全く構わない。
  
     
     
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