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□できない相談とできる親友
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【できない相談とできる親友】



「あー……」
「なによ?」
「ゆかりが腑抜けてるから恵ちゃんがボーッとしてる理由もわかった」
「腑抜けてはないわよ。ただちょっと……夕歩、聞いて」
「なに?」
「昨日のデートの話」
「ごめん、断りたい」





自分からふった癖に即答して逃げようとするから、腕を掴んで逃げさせない。
第一、ここは夕歩の部屋なんだから何処に逃げるの?
待ち人はまだ帰ってこない。
むしろ、友人に会う為にここにいると偽って待ち人を待っていると言うか。
『逢う』という約束をしていない場合、ちゃんとアポイントメントをとった方がいいのか。
それとも、不意打ちした方がいいのか。
どちらか選択出来なかったから妥協案。
『友達を利用させてもらう』
使えるモノは親友でも使うべきだと思う。

「卑怯って言うか……とりあえず私をダシに使うのいい加減止めて」
「友達の恋を応援するのは自然なことでしょ?」
「あ、恋って言うのはやっと認めたんだ」
「認めたっていうか…それ以外に無いって結論に達したって言うか……たぶん、恋じゃないかなとか…」
「デートって言ってる時点でそういう対象になってると思うんだけど。なに?今更その言い訳」
「言い訳じゃなくて確認よ」
「素直に恵ちゃんが好きだって叫べばいいと思うよ」
「増田さん、昨日のこと何か言ってた?」
「デートのこと?『楽しくなかった』って言ってたよ」
「…………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………………」
「冗談だから!ゆかり、泣かないの!」
「泣いてないわよ……」

止まった心臓は無理矢理動かして、慌てながらも含み笑いの友人を右目で睨み付ける。
『デート』と言ってはみたものの。
増田さんに確認はとってない。
『これはデート?』
『違います』
………そう答えられたら次こそ本当に心臓が止まる。

「昨日は二人きりで一緒に出かけた癖に。何で今日は二人で逢うのも嫌がるの?」
「だって、夕歩が三人でデートはもうお断り!って言うから」
「当たり前でしょう。何で私が良い感じの二人に割り込まなきゃいけないの?」
「私たち良い感じだったの?」
「誰かさんがヘタレなきゃ」
「ヘタレてません」
「ヘタレてます。そんなの染谷ゆかりじゃない!ってくらいヘロヘロ」
「ヘロヘロって言うかメロメロなのよ」
「だから、それは私じゃなくて恵ちゃんに言うべきなの」
「そんなのドキドキして出来るわけないでしょ!」
「正しい恋心で正しい乙女心だと思うけど、それを私に叫ぶの止めて。………で?」
「…なに?」
「なにか聞いて欲しかったんじゃないの」
「ああ…」


   
  
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