【3】

□For Good(reprise)
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【For Good(reprise)】




−…説明してみて

−今更、何を説明しろって言うんですか?


むしろ、私の方が今のこの状況を説明して欲しい。








おかしい。
絶対に今のこの状況はおかしい。
事の起こりは数日前、未練がましくも情けない私の行動から。


もしそこに居たらどうする?
そう考えながらも無意識に足があの人といつも逢っていた場所に向かうから。
正確には『そこに居てほしい』だったのかも知れない。
…いや、かも知れないじゃなくそう願っていたんだと思う。
本当に我ながら未練がましいにも程がある。
自分で『いらない』と突き放した癖にまだどこかで捨てきれてない。
夕歩がいたから。
夕歩のお陰で。
少しでも良い方に進んだと思っていたのに、結局何も変わってない。
これじゃ、夕歩との事まで全て無駄だったって気がして。

−変われるなんて誰が言った?

誰も言ってない。
だけど、そっと背中を支えてくれる人はいた(いる)から。
それでも、支えてくれる手を振り払って逃げ出したのは私。
まったく、私は成長どころか後退しかしてない気がする。

「……ね」

耳元にかかる息に、声に。
わざと飛ばしていた意識が無理矢理戻される。
おかしい。
今のこの状況は一体なんなんだ?

「何か違うこと考えてるでしょ?」
「違うことって言うか……事の始まりを思い出してます」

…ほら、ドラマや漫画ならこういうシチュエーションよくあるだろ?
壁際とか木の幹に両腕で挟まれて追い込まれる、って。

「始まり?」

くすり、と。
笑う度に首筋に息がかかってパニックになりたいのに生存本能の所為でそうも出来ない。
今ここで、パニックに陥ったらたぶん命にかかわる。
きしり、と。
きしんだ腕に顔を顰めて。
今のこの状況はどちらかと言うとドラマや漫画じゃなくて順が好んで読んでる系統の雑誌にのってそうだ、とか。

「あと、関節はずされる前に逃げ出す方法も」

背中側から木に押さえ付けられて顎にあたる樹皮が痛い。
なんだ?この状況。
この後ろから押さえつけられて、制服はだけさせられてる今のこの状況。
なんだ、このどう見ても後ろからヤラれてるようにしか見えないこの状況。
……どこの強姦ネタ特集のエロ雑誌だ。

「ん、それは心外。痛いことはしないつもりなのに」
「…っ!」

耳に濡れた感触。
反射的に首をすくめて逃げようにも後ろ手にされて抑え込まれた腕はびくともしない。

「…気持ちいいことはするつもりだけど」
「それなら痛い方がまだいいです!」
「えー、無道さんそういう意味でもM?」
「そういう意味でもどういう意味でもいいですけど」

はだけた(させられた)制服の隙間から入ってくる指先が的確すぎて。
そして、人を拘束する方法が的確すぎて。
………誰だよ、経験無いとか言ってた人は。
これならよっぽど自分よりも触ることに手馴れてる。

「無道さん意外に胸あるのよね」
「人の耳元でそういう事呟くの止めてくれませんか」

喋ってる間に入る『……』は省略。
簡単にあがる息は仕方ない。
こっちは触られ慣れてない。

「…ね、無道さん」

夕歩が触ってくれようとした時には断ってたから。
……こういう風に触られるのには慣れてない。

「説明して」

だから、説明して欲しいのはこっちの方だ。

   
      
   
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